医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本/中野ジェームズ修一

 

医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本

医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本

 

 

 箱根駅伝で4連覇を果たした青山学院大学のフィジカルトレーナーとして知られる中野さんが運動不足の中高年に運動の仕方を教えます。

 健診とかでメタボ認定されて「運動しなさい」と言われる中高年の方は少なからずいらっしゃると思うのですが、なかなか実行に移せないのは、

 ・忙しくて時間がない
 ・何をやればいいのか分からない
 ・運動が苦手
 ・運動をすると体が痛くなる

といった理由があるということですが、フィジカルトレーナーはトップアスリートだけではなく、こういうフツーのオジサンにも医学的に正しい、効率的な運動法を指導されるんですね!?

 ワタクシ自身はテニスからマラソンへの移行がありましたが、あまり運動自体に抵抗はなかったのですが、やっぱり何らかのメリットを感じることができないと継続にはつながらないということで、慢性的な痛みを取ったり、肩こりの症状を軽減したりと、目に見えた効果のあるモノを多く紹介されています。

 この本のターゲットになっているのは40~60歳位の方だと思われ、まだある程度カラダが動く人が多数だと思うので、運動不足のコワさをそこまで痛感されていないと思うのですが「人生100年時代」と言われ平均寿命が100歳になることを伺う勢いでありながら、あまり健康寿命は延びていないということで、寝たきりで数十年を過ごすことのないように、早くからの準備が重要なようです。

 

横田空域/吉田敏浩

 

 

 2020年の東京オリンピック開催を受けて羽田空港の発着便数を増やそうとした際、飛行ルートの制限の関係で浜松町辺りをかなり低空で飛行するということが報道された関係で「横田空域」のことを知られた方もおられるかと思いますが、その驚くべき現状を詳細に紹介したのがこの本です。

 ワタクシ自身はずっと以前に元外交官の孫崎亨さんの『戦後史の正体』で「横田空域」のことを紹介されていたのを読んで初めて知り、国売ったとも言える当時の為政者の判断に憤りを覚えたのですが、未だ日本の空域のかなりの範囲で日本の航空機より米軍機の飛行が優先されるという独立国とは思えない状態が続いているということです。

 「横田空域」というのは、南は三浦半島全域と伊豆半島の北半分辺りから新潟県に至るまでの首都圏の大半の空域を占めており、都心においてもヘリコプターがかなりの低空飛行をしたり、群馬県辺りではかなり頻繁に危険な飛行訓練を繰り返していて、地域住民が騒音の恐怖に晒されているということです。

 苦情を申し入れてもカタチばかりの“配慮”の意向が示されるものの、ほとんどその“配慮”に沿った行動をしないばかりでなく、実際に墜落事故などを起こしており、やりたい放題の米軍ですが、政府はそれについてアメリカ側に抗議をしないどころか、国民ではなく米軍側に立った答弁をするといった始末です。

 日本同様に第二次世界大戦の敗戦国で米軍が駐留しているドイツやイタリアでは、当たり前と言えば当たり前ですが、駐留国の方規制の下で活動しており、日本がなぜこんな国を売るような事態を容認しているのか理解に苦しみます。

 ホントに独立国としてのプライドもクソもあったもんじゃないです。

 

0円で会社を買って、死ぬまで年収1000万円/奥村聡

 

 

 以前、三戸政和さんの『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門 (講談社+α新書)』を紹介しましたが、この本はそちらの好評を受けてか“二匹目のドジョウ”狙いの類書ということになるのでしょうか!?

 三戸さんが投資ファンドとして事業承継を支援される立場であるのに対し、奥村さんは企業側に立って事業承継を支援されているということで、その立場の違いが取り扱う内容の差異になっており、同じようなテーマを扱っていながら、必ずしも単なる“二匹目のドジョウ”にはなっていません。

 三戸さんが「300万円」とおっしゃっていたのも結構衝撃的でしたが、もっと!ということで「0円」になったのかも知れませんが、三戸さんがロジカルに話を進めるのに対して、奥村さんは事業承継に悩む中小企業のオヤジさんの顔が見えるような話をされていて、ぶっちゃけ会社を生かしてくれるのなら0円でも…という最終ライン的なハナ
シもあるようです。

 長らく中小企業の廃業率の改善が重要な課題となってきたワケですが、三戸さんや奥村さんのこういう啓蒙はかなりのインパクトがあるはずで、事業承継の機会を増やすだけにとどまらず、大企業での勤務経験のあるサラリーマンがワンマン社長、ドンブリ勘定の中小企業を承継するこおとで、企業経営の健全化を図ることも期待でき、是非二匹目に止まらず、三匹目、四匹目のドジョウが出てくるくらいの活性化を期待したいところです。

 

FOOTBALL INTELLIGENCE/岩政大樹

 

FOOTBALL  INTELLIGENCE フットボール・インテリジェンス 相手を見てサッカーをする

FOOTBALL INTELLIGENCE フットボール・インテリジェンス 相手を見てサッカーをする

 

 

 元日本代表で長らく鹿島アントラーズの最終ラインを支えた岩政さんが「相手を見たサッカー」を提唱されます。

 日本では度々「自分たちのサッカー」というコトバが取り沙汰されて賛否両論がありますが、概ねお欧州や南米などのサッカー先進国からは冷ややかな見方をされることが多いようです。

 そういった中で岩政さんが提唱される「相手を見たサッカー」なのですが、ある意味どんなスポーツでも相手がいて、しかもサッカーは絶えず攻守が入れ替わるスポーツなので、相手のプレーにどう対応するかということは、言われてみれば当たり前のことです。

 でも「相手を見たサッカー」が必ずしも“受け身”なのかと言えば必ずしもそうではなく、ある意味“撒き餌”みたいな感じで、相手が自分の意図した方向に行くように仕向けるということも実際のゲームの中では行われていて、そういうプレーこそが「マリーシア」であって、日本サッカーでよく言われているようなずる賢さだけを意味するワケではないようです。

 おそらくそういった“騙し合い”にどうやって打ち勝つかというのが岩政さんがおっしゃる"FOOTBALL INTELLIGENCE"なんでしょうが、そういう意味では日本のサッカーにはまだまだ"FOOTBALL INTELLIGENCE"が足りないんでしょうねぇ…

 

サイバーメトリクスの落とし穴/お股ニキ

 

セイバーメトリクスの落とし穴 (光文社新書)

セイバーメトリクスの落とし穴 (光文社新書)

 

 

 この本の著者は本格的な野球選手としての経験が全くないにも関わらず、Twitterダルビッシュ投手とひょんなことからつながり、今では投法のアドバイスまでされることになった方だということです。

 スポーツ総合誌『Number』が毎号スポーツに関する書籍を紹介しているコーナーがあって、この本が紹介されているのを見て手に取ってみたのですが、その紹介の中で、フザけた著者名(Twitterのアカウント名?)だということもあって、ダルビッシュ投手がアドバイスを求めているというエピソードが無ければスルーしていたところだったとおっしゃっているのですが、300ページ以上にもわたる深遠な野球論にはちょっと唸らされます。

 投球論やバッティング論、キャッチャー論の章では、個々のプレーに関する詳細な内容が多く、あまり野球に明るくないワタクシとしてはほとんどついていけなかったのですが、監督の采配や球団の経営などマクロ的な内容になるに従い、この方の理論のスゴミがおぼろげに感じられます。

 タイトルではサイバーメトリクスが掲げられていますが、この方、MLBの最先端の戦略・戦術にも明るく、ひと頃流行ったスモールベースボールやサイバーメトリクスから、フライボールを経てオールラウンドな対応能力、心理的なアプローチの再認識といったトレンドと、NPBが如何にそういった流れにキャッチアップしていくべきかと言う方向性についても紹介されています。

 ただやはりNPBでは未だ名選手がいきなり監督になったりするケースも多く、分析的なアプローチに著しく書けていることが否めず、なかなかキャッチアップは容易ではなさそうです。

 マニアックな野球ファンはモチロン、通ぶりたいソフトなファンも是非一読の程を!

 

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?/山口周

 

 

 アートに関する教養がグローバルビジネスにおいてコミュニケーションの役に立つ!?みたいな内容かと思ってこの本を手に取ったのですが、これからのビジネスにおいては「アート」が主要な地位を占めることになるかも…という意外な展開の本だったりします。

 というのも昨今のビジネスにおいては、あまりに様々な事象の進化が早すぎて、かつ情報も多すぎてロジカルな判断を突き詰めることが難しくなっており、情報や判断材料が不足していると思われている中で判断を下す基準として「美意識」が重要になってくるということです。

 また従来のビジネス上の判断においては、そのアカウンタビリティの要請から「サイエンス」と「クラフト」に依拠することが多かったのですが、進化のあまりの早さなどから、ロジックに頼れば頼るほど、コンプライアンス的な判断の誤りを犯してしまう傾向が強まったことから、「美意識」に基づく判断が重視されるようになってきたということです。

 そういった「アート」がビジネスにおいて成功を収めた好例として、アップルにおけるスティーブ・ジョブズの存在が挙げられているのですが、確かにあれはジョブズの感性こそが成功の源泉であったのは間違いなさそうで、ちょっと馴染のないトピックですが、かなりナットクさせられる内容です。

 

平成批評/福田和也

 

 

 文系評論家の福田さんが平成の世を振り返られます。

 平成の世を通して日本人と日本の国家は「幼稚化」したと指摘されます。

 耳が痛い所ですが、政界などを見てもカラダを張って何かを守り抜こうといった姿勢を持つ政治家はついぞ見なくなりましたし、経済界でも何かセコい話題が多くて、矮小化の流れが止まらないようです。

 そういうところの原因に日本人としての誇りの欠如を指摘されていますが、「日本人の誇り」というのはどうやら昨今の反中・嫌韓の裏返しとしての日本礼賛論ではなさそうで、自身の誇りの延長線上としての民族としての“誇り”みたいなモノを指すようで、結局は自分自身の矮小化を薄々感じながら、その延長線上にある“誇り”なんて感じられないでしょ!?ということでしょうか…

 そういう“誇り”は教育によってこそ生まれるはずだということですが、平成日本の教育はグローバル志向で、“誇り”を養うモノとは真逆の方向に行ってしまっているということもあり、国語教育の質の確保さえも覚束ないようです。

 令和になったからと言って急にこういう流れが反転するワケもなく、ちょっとこういう本でそういう寂しい状況にあることを認識するだけでもちょっとは救いになるんでしょうか!?