精神鑑定はなぜ間違えるのか?/岩波明

 

 

 精神科医である著者が、戦後以降の重大な殺人事件における精神鑑定の実績を踏まえて、犯罪捜査における精神鑑定について語られます。

 冒頭で『チーム・バチスタの栄光』などの医療を題材にした小説で多くのベストセラーを出版されている海堂尊さんが、精神医学を題材にした医学ミステリが存在しえないとおっしゃっていることについて、精神医学そのものがミステリだからと言及されていることを紹介されていますが、症状を把握するのが患者へのインタビューを通してとなることが、正確な症状を把握することの障害ともなることが犯罪捜査の現場でも大きな課題となっていることが紹介されています。

 付属池田小学校での殺人や帝銀事件、永山事件など戦後の重大事件の犯人の精神鑑定について紹介されているのですが、精神鑑定自体が、担当者の思考の傾向に影響を受ける部分が未だ多いことや、鑑定を受ける側の意図が鑑定結果に少なからず影響を及ぼすところもあるようで、近年精度が向上しているとはいうものの、本質的な部分が鑑定者の資質に依存しているということからなかなか客観的な結果と言い難い所が信頼性に疑問を呈されるところが残念なところです…