国教を越えたスクラム/山川徹

 

 

 昨年のW杯では様々な国出身の選手が“One Team”となってベスト8への躍進の原動力となったことが印象的でしたが、この本はこれまで日本代表としてプレーした外国出身の選手たちを紹介されています。

 個人的には日本でプレーした外国人出身の選手の草分けの一人であるシナリ・ラトゥ選手を取り上げたパートが印象的なのですが、大東文化大学でプレーをしていた頃、あまりのプレーの迫力にブッ飛んだ記憶がありますが、当時はやはり圧倒的少数だったということもあって、かなり苦労されたことを明かされています。

 周囲からの“ガイジン”扱いで、試合中のヤジに始まり、審判のジャッジすらも留学生がいることでキビシめに吹かれることまであったということで、ラトゥ選手自身も先輩であるノフォムリ選手がいなければトンガに帰ってしまっていたかもしれないとおっしゃっています。

 また、日本代表初の外国出身キャプテンを務めたアンドリュー・マコーミック選手も紹介されているのですが、今となっては信じられないんですが、ジャパンがどうしようもなく弱かった頃、かなり多くの選手がちょっとしたケガやスケジュールの都合などで代表を辞退する事態が多発し、当時の代表監督であった今は亡き平尾誠二さんやキャプテンであったマコーミック選手を中心とした、日本代表としての誇りを取り戻そうと取組まれ、それが日本でのワールドカップで大輪を咲かせたかと思うと、長年ラグビーを見てきたワタクシとしても感慨深い所です。

 この本が出版されたのはワールドカップ直前の2019年8月で、最後の章に昨年のワールドカップで活躍したリーチマイケル、トンプソンルーク、具智元たちも紹介されていますが、ちょっと扱いが少なくて、もうちょっとボリュームが厚くてもよかったんじゃないの!?と思うのですが、そこはワールドカップでの躍進を受けての第二弾を期待しつつ…

 ちなみに、第6章の扉ページの写真に、“笑わない男”稲垣選手の爽やかな笑顔の写真が載っています!(笑)