平成精神史/片山杜秀

 

平成精神史 天皇・災害・ナショナリズム (幻冬舎新書)

平成精神史 天皇・災害・ナショナリズム (幻冬舎新書)

 

 

 思想史を専門とされる方が語られる「平成」です。

 とは言いながら平成の30年ちょいを振り返ってどうのこうのと言うワケではなくて、平成の時代における“考え方”をもたらした要因について語られているので、古くは奈良時代から昭和の高度成長期までをカバーされており、主に幕末から昭和への推移が「平成」に及ぼした影響を語られています。

 サブタイトルに「天皇・災害・ナショナリズム」とありますが、内容はかなり散文っぽいところもあり、通史的なモノを期待される向きには残念な感じになるかも知れませんが、平成の“コア”みたいなモノを掴みたい方にとっては、丹念に読み解く価値がありそうです。

 元号で時代を捉えるということで、300ページ超の大著の7割位は天皇制に関する内容で占められています。

 「平成」を振り返るテレビ番組などのコメントでは「平成」という元号に反して激動の時代だったというコトバをよく聞きましたが、そもそも元号と言うのは朝廷の“願望”を示すことが多く、得てして逆の方向へ行ってしまうことはありがちだと指摘されています。

 さらには上皇陛下が天皇在位中に「国民に寄り添う」姿勢を鮮明にされていましたが、そのことについて清和天皇の時代に災害が多発し、世の中を守るための祈りが足りないとして国民に詫びられたことが紹介されているのですが、平成の時代も災害が多発し、天皇皇后両陛下が被災地に慰問に訪れるのは、カタチこそ違うものの、清和天皇の時代の考え方を再現されているのではないかとおっしゃいます。

 最後の方で皇統の存続について、女系天皇を認めるか否かの議論について言及されていますが、片山さんはもっと根源的なところから、多くの日本人は想定もしていないと思われますが、天皇制がなくなったらどうなるんだ!?ということを提起されていたりもします。

 禅問答のような内容もあり、難解なところも少なくないのですが、いろいろと考えさせられるところの多い本でした。