教育勅語と御真影/小野雅章

 

 

 安倍政権時の森友学園スキャンダルの際には、幼稚園児に教育勅語を暗誦させたことで話題になりましたが、教育勅語導入の経緯から今なお続く影響力について語られた本です。

 

 右寄りの政治家たちが今なお折に触れて蒸し返す教育勅語ですが、確かに道徳的な根幹をなすことが語られていて、それはそれで有用性があるのは間違いないのですが、それを天皇陛下が国民に語り掛けるというカタチを取られており、天皇制の護持を意図したモノであることから、さすがにやっぱりアウトでしょ!?とは思うのですが、導入当初も、西欧文明へのキャッチアップに傾きがちな当時の風潮に対し、「和魂洋才」というコトバもあるように、精神的なモノは天皇制への忠誠みたいなものを維持しようということもあって、開明派と保守派の綱引きの結果導入されたようです。

 

 その後も、台湾や朝鮮の併合などの経緯もあって、教育勅語の有効性にギモンがさしはさまれたり、国威発揚のため内容の周知が強化されたりと、激しい綱引きは続き、結局は保守派の方に大きく寄って破滅に至るワケですが、その中でそういう極端な方向に振れてしまったのは、教育勅語による精神教育みたいなものが少なからぬ影響を及ぼしていると感じられます。

 

 戦後、GHQの占領政策の中でも教育勅語の取り扱いについては議論があったようですが、やはり軍国主義的というか国粋主義的な思想が教育勅語から導かれたんではないか、というところは否定しがたい、という考えだったようで、結局は奉読は禁止されることになってしまいます。

 

 元々、天皇制というのは殊更に強調され過ぎないことで永らえてきた側面もあり、さりげなく存在し続ける方が「らしい」んじゃないかと思うのですが…