毎日新聞の記者の方が「生前退位」に纏わる天皇陛下の譲位についての経緯を紹介した本です。
「譲位についての経緯」というとかなりプレーンに響きますが、この本では退位にあたっての皇室・宮内庁vs安倍官邸の暗闘がかなり詳細に紹介されており、かなり安倍官邸側にキビシイ見方をした内容になっています。
譲位された上皇様について、著者である伊藤さんは相当好意的な立場を取られていて、どちらかというと絶対権力者であった天皇としての権威が抜けきれなかった昭和天皇に対して、即位された時点から「象徴天皇」であった上皇様が、「象徴天皇」としてのあるべき姿を皇后陛下であった現上皇后陛下とお二人で手を携えつつ、試行錯誤しながら探っていき、結果として国民からの大きな支持を受けることになった経緯を紹介されています。
それに対して、安倍官邸は天皇陛下を始めとする皇室を、自身の支持の道具と捉えているフシがあるとまで指摘されていて、それに反する意向を現上皇陛下や皇室・宮内庁が表明された時には、あからさまな不快感を示すこともあり、譲位の意向を圧殺しようとまでしたようですが、意向の表明を強行されたのちに、圧倒的な国民の支持を受けて、対応の再考を強いられたように、かなり皇室に対して「失礼」な対応が目立ったようです。
あれだけ右寄り志向が取り沙汰される安倍氏の対応としてはかなり意外な気もしましたが、結局、ああいう右寄りの態度も、単なるアピールにすぎなかったんでしょうね…