学問と政治/芦名定道、宇野重規、岡田正則、小沢隆一、加藤陽子、松宮孝明

 

 

 菅首相が就任間もない頃に日本学術会議の会員の推薦があった105名のうち6名のみ任命拒否をしたことで物議を醸しましたが、この本は任命拒否を受けた6名の方々が政治と学問の関係性について語られた内容を集めた本です。

 

 個人的にはこの6名の方で知っていたのは『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』で知られるの加藤先生のみなのですが、それぞれの先生方がご自身の専門分野に照らして、人によっては任命拒否の法的な背景なども含めて語られています。

 

 任命拒否騒動当時の報道でも取り沙汰されているように、ロクに理由も説明せずに任命拒否をやっちゃったモンだから、徐々にそういう部分について非難が広がり始めた段階で、憲法15条なんてテキトーな後付けをしたことについては、拒否された6名の中には岡田先生、小沢先生、松宮先生という法学の専門家もおられるので、この本の中でも当たり前のようにコジつけの否定をされていて、官邸のヤッツケ感を改めて印象付けられています。

 

 中でも印象的だったのがやはり加藤先生のお説で『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』で丹念にアメリカとの戦争に至った経緯を中学生向けに語られていたように、この任命拒否を戦前の美濃部達吉教授の天皇機関説事件になぞらえて語られており、こういう強権的なやり方というのが、いつかまた間違った道へと導いてしまうのではないかという危惧を呈されているのに、ナットクせざるを得ないところがなかなか恐ろしいところであります。

 

 安倍政権の後半から、人事を牛耳ることによる官邸支配や放送権をちらつかせたメディア支配など強権的な姿勢が目立っていましたが、その実行役とも言える菅氏が首相に就任しても、ついついクセでやってしまったことが、結局は長く尾を引いて自身の担任の遠因となったとも言えますが、結局岸田政権においてもこの件に関して改めて説明することも無いようで、民主主義の根幹たる説明責任をヘーキで放棄しようとする姿勢というのはもっと激しい球団を受けてもしかるべきなんだとは思いますが、今や総翼賛体制とも言える状況の中で、改めていつ間違った方向に暴走して行かないか不安でしょうがなくなる想いがします…