長期腐敗体制/白井聡

 

 

 『主権者のいない国』など安倍政権への辛辣な批判を繰り広げることで知られる白井さんが安倍政権を総括したカルチャー講座での講演内容をまとめた本です。

 

 この本の中で白井さんは安倍政権が確立した官邸主導の政治を「55年体制」なぞらえて「2012年体制」と表現されていますが、その表現自体オリジナルではないそうで、安倍、菅政権による強権的な官僚、メディア支配をそう呼ぶ向きがあるようです。

 

 その「2012年体制」の戦後政治における位置づけから始まっているのですが、細川政権の樹立による「55年体制」の崩壊以降、徐々に政治の反知性主義的な傾向が表れ、小泉政権でよりその色彩が強まり、民主党政権を経て安倍政権で決定的となったということです。

 

 結局、「アベノミクス」にしても大幅な金融緩和策を用いただけで、インフレ誘導を図ることはできず、株価の上昇も一時的な期待を反映したに過ぎず、失業率の低下も単に人手不足を反映したモノで、アベノミクスの効用とは言えなかったようで、結局は安倍氏の死後、ようやくメディアも報じ始めたように、諸外国から実質賃金の伸びで大きく遅れてしまって、ビンボー国家にしてしまった罪悪だけが残ったということになりそうです。

 

 外交にしても、独自外交と言いながら、徹底した対米追従を軸に、目の前の大国指導者に媚びを打っていたにすぎないとブッた切っています。

 

 何よりも官邸の官僚、メディア支配の強化で忖度を蔓延させた挙句、中国やロシアもびっくりの強権国家を作り上げてしまったことに空恐ろしさを改めて感じた次第でした…