『金閣炎上』『五番町夕霧楼』などの著作で知られる作家の水上勉さんが、ご自身の”精進料理”の実践を紹介された本です。
水上さんは幼少期にお寺に修行に出されていた時期があったようで、その修行の一環として、お坊さんたちの食事をつくられていた経験から、作家になられて以降もご自身で畑を耕されて”精進料理”をつくられていたということです。
ワタクシがこの本を手に取ったのは、ワタクシが高校生の頃に一世を風靡したグルメ漫画『美味しんぼ』で紹介されていたからなんですが、そこでも触れられてはいるのですが、この本では水上さんが手がけられている”精進料理”を紹介されてはいるのですが、その内容と言うのはいわゆる世間的なイメージでの、肉や魚を食材として使わず野菜で構成されたメニューという形式的なモノにとどまらず、仏様の恵みである食材のうまみを十全に引き出そうとするもので、そういうことを”精進”とおっしゃられていると思われます。
だから、ヘタだと思って捨てていたのを和尚さんに見咎められたり、美味しそうな食材を見てホクホクしているのをたしなめられたりといったこともあったようですが、それも仏の道ということなんでしょうかね…
この本は1月~12月のそれぞれの月で、ご自身で栽培されている「畑と相談」されながら、その時々で一番おいしくできるように”精進”されており、これこそが”精進料理”の粋なんだろうな、と羨ましく思います。