佐藤さんのソ連の崩壊についての本というと、初期の出世作である『自壊する帝国』を思い出しますが、あちらが政権の内部から、帝国が崩壊していく様子を追ったドキュメンタリー的な趣だったのに対して、こちらはソ連が崩壊に至った背景というか、経緯をメインに語られたモノとなっています。
ソ連の崩壊の引き金を引いたのは、ペレストロイカということで民主的な改革に取組んだゴルバチョフということで衆目は一致しているようですが、西欧では冷戦に終止符を打つキッカケを作ったということで、ある程度の評価を得ていますが、ロシアでは、ソ連を崩壊させたからというだけではなく、社会主義的な発想の基本的なところも含めて、ロシア正教に対する配慮など、ロシア人としてはかなり基本的に受け継がれているはずの”常識”に相当欠けたところがあったようで、当時の周囲はかなり戸惑ったところはあったようです。
ペレストロイカが起因とは言い切れないところもあるようですが、同時期に民族的な意識が高まったところもソ連の崩壊の一因だということで、そういう複合的な要素はあったモノの、世界を二分するほどの勢力を保った政治思想が半世紀余りで終焉を迎えたというのもオドロキなのですが、そもそも思想的にムリがあったのか、運用する側に問題があったのか、なかなか難しい所はあるようです。