『五体不満足』の乙武さんが語られる「自己肯定感」についての本です。
乙武さんが「自己肯定感」について語られるのは、ご自身が教員をされていた際に、休み時間に生徒たちが「先生、トイレに行っていいですか?」と立て続けに聞かれたことについて、フツー休み時間には勝手にトイレに行くでしょ!?と思われて、いちいちそういうことでも先生の許可を求めてしまうことに、ある意味危機感を覚えられて、そういう行動に出てしまうことの原因に「自己肯定感」の欠如を感じられたようです。
この本では自己肯定感の形成について、ご自身の生い立ちと、教員としてのご経験、ご自身の子育てを踏まえて語られているのですが、ご自身は重い障害を持って生まれてきたにも関わらず、伸び伸びと成長されたことについて、ご両親が無条件の愛情を溢れるほど受けながら育ったから、障害に起因する多少のトラブルに合いつつも、明るく過ごせたとおっしゃいます。
それに対して、乙武さんが教員時代に接した生徒たちは少なくない割合で、どこかオトナの顔色を窺っていたようで、そういう子供たちは何か両親から愛されている感が不足しているんじゃないかと感じられた乙武さんは、特にトラブルメイカー的な子供を中心に、その子たちがその日にしたことの何か一つをホメるコメントを日々、親御さんに連絡して、親御さんからもその子をホメてくれるようにしたことで、次第に心を開いていったということがあったようです。
また乙武さんは子育ての過程で、生まれて初めてご自身の障害について無力感を感じたとおっしゃいますが、それでも乙武さん自身が自分が可能な限りの愛情をもって子供たちに接していたら、教えたわけでもないのに、いつからか子供たちが自分たちの判断で乙武さんをサポートするようになったということです。
というように、子供たちは何か自分が信頼されているということを感じることで、自己肯定感を抱くようになり、そのことが自身に繋がったり、周囲を気遣うことにつながるようで、そういう姿勢がプラスのスパイラルにつながるということをおっしゃられています。
と言うワケで、子供たちのダメなところばかりに着目するのではなく、いいところに着目して、そういう部分をちゃんと見ているんだということを伝えることで、欠点を矯正しようとするよりも、はるかにメリットがあるんだということは留意しておいた方がいいのかも知れません。