戦後日本が失ったもの/東郷和彦

 

 

 太平洋戦争を終戦に導いた外相東郷茂徳を祖父に持ち、父も兄も外交官という外交一家に生まれ、自らも”知の怪人”佐藤優さんの上司として共に北方領土問題返還に取組んだ東郷和彦さんのエッセイ的な著書です。

 

 東郷さんが外交官として世界の様々な国々を見られてきたご経験を通して、時折帰国をするたびに日本を見て、何か大事なモノを無くして行っているという感覚があったということです。

 

 東郷さん自身が着任前の語学研修で英国に滞在した際に、豊かな自然と、それと調和して生きる人々の姿をみて、それをご自身の「原点」だとおっしゃっていて、かつて日本は共通するような志向を持っていたはずだとおっしゃいます。

 

 それが、戦後経済発展を急ぐがあまり醜いコンクリートに覆われた国土にしてしまったことに大きな悔恨を抱かれているようで、自然豊かな国土を取り戻そうという動きをされているということです。

 

 この本が出版されたのは2010年ということで、「失われた○十年」の真っ最中だったわけですが、確かに一旦経済的には豊かになったけれども、殺伐とした世の中になり、その上経済的な繁栄まで失われてしまうと何も残らないんじゃないか、という危機感をいだかれていたんじゃないかというところもあり、豊かな心を取り戻すことが、ある意味国家の再興につながると思われていたような気がします。

 

 コロナ禍で一旦停滞してしまったモノの、インバウンドに向けた観光資源掘り起しの中で、そういう部分の再評価はある程度進んでいることもあり、多少マシになったんじゃないかと思える部分はあるのですが、コロナ禍での停滞により、それが逆行しなければいいな、と感じた次第です。