持たない暮らし/下重暁子

 

 

 2015年出版の『家族という病』で知られる下重暁子産の著書ですが、この本はそれ以前の2000年出版の『シンプルのすすめ』を文庫化に当たり改題して2008年に出版された本です。

 

 この頃の作風は、割と進んだ女性が同世代のオピニオンリーダーとしてライフスタイルを語るといった趣で、時折『家族という病』以降の尖ったところを見せるモノの、『家族という病』を読んでから見て見ると、どこか颯爽とした姿を「演じ」ようとしているように見えるのは穿ち過ぎた見方でしょうか…

 

 後の2018年に出版される『極上の孤独』にもみられるような、最近でいうミニマリスト的な要素も見受けられて、かなり進んだ著作だったんだなあ、という印象も受けます。

 

  この本の中でおっしゃられているのは、「持たない」というと切り捨てることをイメージされるかも知れませんが、元からあまり「買わない」ということに重点を置かれているようで、選び抜いた良いモノだけを身の回りに置いて生活を充実させるという意味合いが強いようです。

 

 ただ、それって、かなりの審美眼が求められることでもあり、かつてはある程度モノに囲まれていたであろう下重さんだからこそできるんじゃないか、というところもあるのですが、ある程度年齢を重ねて「自分」というモノにフォーカスできるからこそ、選び取れる生き方なのかも知れません。