苦しかったときの話をしようか/森岡毅

 

 

 経営難にあえいでいたUSJのV字回復の立役者となったことで知られるマーケティング・ディレクターの森岡毅さんがご自身のお嬢さんの就活に当たってしたためた私的なアドバイスが元となった著書だということです。

 

 日本人の多くは就職をするにあたって、ホントに何をしたいのかがわからないという状態で就活に臨んでしまうようですが、そういうことになってしまうことについては、大多数の人たちが自分と向き合うことをしていないためだと指摘されています。

 

 そういうSelf Awarenessこそがキャリアデザインにおいて最重要であり、しっかりと自分と向き合い、自分の適性と進みたい方向を意識することで、かなりの精度で「正しい」進路を選ぶことができるということですし、さらには進んでいる方向性と自分が志向している方向性を見極めることで、軌道修正の判断もしやすいということです。

 

 私的に書き留めたモノだといいながらも、ご経験を踏まえてのSelf Awarenessを促すための方法論などは具体的かつ実践的なモノであり、これまであまり触れられることの少なかった「何をしたいのかがわからない」という根源的な問題にかなり実効性のある処方箋を提供するという画期的なモノとなっています。

 

 さらにはお嬢さんに向けた愛情の相まって感動的な著書ともなっているのですが、ちょっと中途半端なタイトル、サブタイトル設定もあって、この本そういう価値を十全に伝えきれていないような気がするところがかなり残念で、編集者はもうちょっとなんとかできなかったのかとも思いますし、森岡さんもご自身のマーケティングのノウハウを惜しみなくつぎ込んで世に広げていただきたかったところですが、ひょっとすると、読んで欲しいのはお嬢さんなんで、それでよかったのかも知れませんね…