ワンオペ育児/藤田結子

 

 ジェンダー論を専門とする社会学者の方が紹介する、子育てを取り巻く若いお母さん方が直面する様々な過酷な状況を紹介した本です。

 

 この本が出版されたのが2017年で、この頃は既にワタクシの周囲でも育休を取得する男性社員も出始めたり、イクメンというコトバが多く取り沙汰されるようになるなど、文字通り「ワンオペ育児」だったワタクシの頃とは随分と状況は変わってきたのかな、と思いきや、本質的にお母さんの負担を軽減する方向にはなかなか向かっていないようです。

 

 やはり多くの若手の男性サラリーマンたちは定常的に長時間労働を強いられる状況にあって、育児に携わろうと思っても時間的な制約が多かったりするという部分もありますが、イクメンとはいうモノの子どもと遊んだりするだけで本質的に世話をすることは敬遠する”なんちゃってイクメン”も少なからずいるようで、キレ気味のお母さんのエピソードが数多く紹介されます。

 

 また、保活でも相変わらず過酷な状況が続いているようで、結局育休期間のうちに保育所を見つけられずに離職を強いられるお母さんも少なからずいるようで、そういう意味での悲哀も紹介されています。

 

 そういうお母さん方へのしわ寄せの多くは、突き詰めると日本企業の子育てへの無理解に帰結する部分が多いようで、以前に比べて相当改善しているようには見えるものの、まだまだオヤジの無理解というのは抜きがたいところがあり、お母さんの時短なんかはあっても、お父さんの側が定時で帰って積極的に子育てにかかわるといったところまでは行っていないようです。

 

 そういう意味で、コロナ禍に伴う在宅勤務の拡大が、子育てにいい影響を及ぼすことも期待されますが、感染状況の改善とともに在宅勤務も退潮にあるようで…

 

 こうやって少子化が進んで行けば、企業業績にも関わるはずで、そういう観点で日本企業も育児環境の改善に取り組んで行かないと将来がない!くらいの切迫感で取り組むようにならないとヤバいはずなんですけどねぇ…