「いい質問」が人を動かす/谷原誠

 

 

 交渉術や質問力に関する多くの著書をお持ちの腕利きのベテラン弁護士の方が、質問を駆使した対人スキルに関して紹介された本です。

 

 ついつい我々忘れがちなことを冒頭で指摘されているのですが、そもそも質問って、答えるのかどうかは質問された側の自由裁量であり、それだけに質問する側は、如何にして答えてもらえるかに配慮する必要があるということを指摘しておられます。

 

 そう聞くと、質問を受ける側が主導権を握っているようにも思えるのですが、質問する側の質問のやり方によって、質問する側が望んでいるような答えを引き出すような方法論もあるという強力なポテンシャルを秘めているとおっしゃいます。

 

 著者の谷岡さんは弁護士で、法廷の中でもそういう質問のスキルを駆使されているワケですが、実際の裁判の中では誘導的な質問は禁じられてはいるモノの、それでも質問された側が気付かないほど巧妙に、質問した側に有利な答えを引き出すこともできるようです。

 

 最初のそもそも論のところで、回答の選択権がある相手に対して、如何にキモチよく回答をしてもらえるかというのが、まず質問法の基本であり、詰問的な質問はまず論外であり、ビミョーに相手のプライドみたいなものをくすぐりながら、答えてもらえるスキルというモノに、ちょっと恐ろしい感じすらします。

 

 そういう質問のスキルというのは、対人的スキルのあらゆる場面で活用ができるようで、交渉はモチロン、育成という他者との対応だけではなく、自己との対話においても、自己成長を促すような質問が可能だということで、質問のスキルを身に付けることがあらゆる場面での自己成長につながるといっても過言では無いようで、対人関係もしくは自己の成長に行き詰まりを感じている人は是非、是非ご一読の程を!