コンプライアンスが日本を潰す/藤井聡

 

 

 昨今は何をするにもコンプライアンスについてヤカマしく言われ、特にビジネスをされている人たちは、雁字搦めにされて窮屈な思いをされていることが多いのではないかと思いますが、この本ではコンプライアンス遵守によって経済的なデメリットを受けてしまっていることについて紹介されています。

 

 グローバリズムというコトバが一般的になって久しいですが、この本が出版された2012年というのは、そのコトバが一般的に膾炙され始めた時期なのかな、と思いますが、その頃から談合やカルテルといった旧来的な日本の商慣行にかなりキビシイ目が向けられて、かなり厳格な取り締まりが行われてきました。

 

 必ずしもそういう商慣行が利己的に自社の利益を追求するものではなく、業界全体の利益となっていたモノも少なくはなかったようですが、アメリカを中心とする諸外国からすると”公正な”商取引を阻害するものだということで、ヤリ玉に上がることになりました。

 

 その結果、タクシー業界や建設業界と言った、割と横の結びつきの強かった業界において大きく利益を損なうこととなり、そういうことも日本が長期的に経済の停滞に苛まれることの一因なのではないかと指摘されています。

 

 ただでさえ、コンプライアンスなんていうと痛々しいまでに従順な日本なのですが、その仕上げとなるのがTPPということで、これを受け入れてしまうと日本経済はアメリカに雁字搦めにされてしまうと警告されているのですが、幸か不幸かアメリカがTPPから離脱してしまったので、そういう事態は避けられたようです。

 

 規制緩和につながるなんて言うと、ワタクシもいいことだと思ってしまいますが、そういう風に考える日本人が多いということは、かなりアメリカの洗脳が行き届いているとも指摘しておられますが、今後中国と対峙して行く上で、重要なパートナーとしての地位を確保し、もうちょっとアメリカに対して発言力を強めて欲しいモノだと、改めて痛感されられた本でした…