老後破産は必ず防げる/大村大次郎

 

 

 『あらゆる領収書は経費で落とせる』などの節税指南を始めとして、おカネに関するノウハウについての著書を多く出版されている元国税調査官大村大次郎さんが、リタイア後に向けたマネープランについて語られた本です。

 

 この本は2016年に出版されたのですが、冒頭で2015年の新幹線車内での焼身自殺事件について語られていて、その動機が”老後破産”だったということで、ちゃんとセーフティネットが整備されていれば避けられたモノだとおっしゃいます。

 

 まず、”老後破産”を防ぐための方策として

  「早めに決断すること」

  「助けを求めること」

を挙げられているのですが、「助けを求めること」について、役所が何かと生活保護を受けることを妨げようとする傾向が強いらしく、そのことについて激しい怒りを表明して、無料で対抗する手段を紹介されています。

 

 本来、基準をクリアしていれば受給できるはずの生活保護なのですが、できる限り支給しないように内部で"指導”されているのか、虚言を弄してまで申請書すら渡さない自治体もあるようで、そういう場合の対抗手段として、無料で利用できる法テラスなどの法律の専門家に同席してもらうなどの方策を紹介されており、悲劇的な結末を避けるためにも積極的に活用するよう呼びかけられています。

 

 また、予防的な手段として現役のうちから対策すべきことを紹介されており、”老後破産”対策としては、リタイアまでに持ち家にしておくべきことを指摘されているのが印象的で、かつ住む自治体を選ぶことで、受けられる支援も相当異なることもあり、かなり重要だということは、多くの人が気付いていないことだと思われるので参考になります。

 

 また、カタチだけでもリタイア後、配偶者や子どもの扶養に入ることで、節税や保険料の節減が図れるといった、小ネタも数多く紹介されており、参考にすべきことが盛りだくさんとなっています。

 

 最後の章では、生活保護の妨害だけでなく、そもそも為政者が困窮者を無視するような政策を取られていることについて、わざわざ1章を設けて怒りを表明されており、小泉政権以降の非正規労働者の増大の悪影響が、その後大量の生活保護受給候補者の発生につながる蓋然性について指摘されており、6年後の現在そのリスクはより大きくなっているように思われ、コロナ禍による新たな貧困層の増大も相まってセーフティネットの整備は喫緊の課題となっているはずなのですが、政権の動きはニブイままで、このままじゃ日本は殺伐とした社会になってしまうんじゃないかと、かなり恐ろしくなってしまいます…