「売る気がない!」のになぜか自然と売れてしまう繁盛の法則/櫻木隆志

 

 

 初期の神田昌典さんの諸作のような、敢えてのアヤシさを感じないでもないですが、どちらかというと川上徹也さんの『物を売るバカ』を始めとするストーリーマーケティングに似たコンセプトを感じるのマーケティングのスタイルを紹介した本です。

 

 この本では著者の櫻木さんが地域の電気屋さんの支援を通して蓄積したノウハウを紹介されていて、かなり前から家電量販店の拡大に押されて減少の一途をたどる街の電気屋さんが如何にして活路を見出していったかを紹介されています。

 

 高度成長期においては、モノを売ることでお客さんのシアワセをもたらすことができたワケで、売る側として積極的に拡販を図ることがお客さんのシアワセにつながっていた時期があったのですが、次第にモノが飽和して行く中でモノを売ることが必ずしもお客さんのシアワセには直結しなくなった中で、モノを売ることと、お客さんをシアワセにすることのどっちにフォーカスするのか!?ということになってしまい、当然企業としてはモノを売らなくては存続できなくなってしまうので、モノを売る方にフォーカスしがちなのですが、そればかりを前面に押し出すとお客さんに取ってウザい存在になって敬遠されてしまって、逆にジリ貧になりかねなかったということです。

 

 それをお客さんのシアワセを実現する方を優先すると、お客さんにとって頼りになる存在になることで、信頼を得て、そういう人からだったら…ということでモノが売れるようになるということで、一見回りくどくてムダなことのように見えながらも、やはり企業は何らかのカタチでお客さんがシアワセになる方策を考えることが生き残りにつながるという、商売の本道のようなことを思い起こさせてくれる貴重な本で、こういうことを真剣に考える人だからこそ、電気屋さんたちも一見常識に反するような提案を受け入れたんでしょうね…