池上彰の行動経済学入門

 

 

 最近、行動経済学というコトバを耳にするようになったと感じる人も少なからずおられると思いますが、新たな概念を分かりやすく説明してもらうならやっぱりこの人!ということで、池上彰さんが身の回りで見られる行動経済学の事例や、基本的な理論の概説、自身が活用する方向性などをシンプルに紹介された本です。

 

 元々経済学というのは、理論を構築する際に合理的経済人という、経済に関わる全ての人々が判断を下す際に、常に経済的に最も合理的な選択をするという、まああり得ないことが前提となっていて、それ故に経済学の理論があまり現実の経済に当てはめることができないということもあって、現実の人間の経済学的観点からすると一見不合理に思える行動をすることを前提として組み立てたのが行動経済学ということです。

 

 理論的には多少複雑なことも紹介されているのですが、行動経済学自体は身近な経済活動に数多く見られて、980円と言った中途半端な値付けをすることや、少し前に流行ったサブスクを取り入れる考え方、松竹梅という値付けなどと枚挙にいとまがないことを紹介されています。

 

 そういった行動経済学の主要な理論である、直感的な選択である「ヒューリスティック」の考察や、どちらかというと得をするよりも損の回避を優先する「プロスペクト理論」といった考え方など、「理論」というと身構えてしまいますが、かなり感覚的に理解しやすい分野なので、経済学の入門的な意味合いでのとっつきもよいのではないかと思います。

 

 行動経済学が有用だと言われるのは、マーケティングへの応用が割とカンタンにできて、しかもかなり応用の方法論も進化しているので、ビジネスへの応用を進められることと、普段の生活の中で「人を動かす」のにも有用だということで、そういう際の工夫もふんだんに紹介されているので、「経済学」と身構えなくても、処世術的にも使えるのが行動経済学のメリットの一つかもしれません。

 

 かなり適用範囲が広く、敷居も低いので、是非是非気軽に参考にしてもらいたいところです。