日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ/安倍晋三、百田尚樹

 

 

 先頃、参院選の応援演説中に大和西大寺駅のロータリーで銃撃を受け急死した安倍元首相が、2012年にふたたび首相に返り咲いた当初の百田尚樹氏との対談を中心としてまとめられた安倍氏の期待論的な内容の本となっています。

 

 元々は、この本にも納められている百田氏の民主党政権のダメっぷりに業を煮やして、雑誌『Will』に寄稿された安倍氏復活への期待論に感激した安倍氏が百田氏にお礼の連絡をしたことから対談が実現したということですが、元々、右寄りの論客と見做されることの多い百田氏と、右翼的なスタンスで知られる安倍氏の根っこで共通する部分があるということもあって、かなり盛り上がった様子が伺えます。

 

 特に、民主党政権の外交の破壊的な失策もあって、アメリカにすんでのところで見放されるところだったのを安倍氏が立て直し、中国や韓国・北朝鮮にナメられてヤラレ放題だったところのテコ入れをしたところなどは、百田氏にとっては快哉を叫ぶべきものだったでしょう。

 

 ただ、当初期待されたアベノミクス民主党政権の余りのヒドさから、あれよりはマシだったけど…という程度にしか成果が出ず、結局は諸外国と比較して、収入の差が拡大してしまうという体たらくで、外交ではそれなりの存在感を回復したモノの、それよりも個人的には安倍氏の尊大さに起因する忖度が蔓延する窮屈な世の中にしてしまったという印象ばかりが残った気がします。

 

 この本に収録された対談の頃は第一次政権の失敗への反省もあって、安倍氏自身もかなり謙虚だったということもあり、後に政権の私物化が取り沙汰されるような傲慢さとは無縁で、なかなかそういうワケには行かないんでしょうけど、このままの低姿勢で、少なくとも外交面であれだけの業績を残していれば、それこそ憲政史上もっとも偉大な政治家と称されたかもしれません。