最近は社会学者のワクを超えて幅広く活躍されている古市憲寿さんが、ダンテの『新曲』、紫式部の『源氏物語』、マルクスの『資本論』といった12冊の名だたる古典について、それぞれの研究者にそのエッセンスを尋ねることで、10分程度で概要を把握しようという趣旨の連載をまとめた本です。
まあ、この本の意図としてはエッセンスを理解するだけではなく、それをベースに原典を読んでみようということを勧められてはいるんですけどね…(笑)
原典が膨大な『神曲』『源氏物語』、難解とされるアインシュタインの『相対性理論』、ニーチェの『ツァラトゥストラ』といった、かなりとっつきにくいモノを中心に取り上げられているところが助かる向きもあるかな…と思うのですが、この本で紹介されている多くの古典派それでもなかなか手に取ってみようという気が起こらないものがあるのも正直なところです。
そんな中で「神の見えざる手」で知られるアダム・スミスの『国富論』が定説で語られる程、自由経済を強調しているワケではないことや、『古事記』と『日本書記』の性格の違いに基づく差異だったりと、世間で流布されているのと少しニュアンスが異なる内容が語られているモノが散見されるのが興味深い所です。
個人的にやはり興味をそそるのが資本主義の限界への処方箋を提供するとして、最近再評価されつつあるマルクスの『資本論』で、最近出版される多くの『資本論』の解説書で、グローバル化の進展についても語られているなどのマルクスの先見性がここでも触れられていて、さらに興味をソソるところなんですが、それでも原典を手に取ることはないんだろうなぁ…(笑)