袁世凱/岡本隆司

 

 

 先日取り上げた『曾国藩』、昨日の『李鴻章』に続き、袁世凱清朝末期の宰相三代期が完結ということで、意識しないまま年代順に取り上げることになりました。

 

 袁世凱というと清朝最後の宰相でありながら、辛亥革命では寝返った挙句、中華民国の大統領にも就任するということで、日本人的な美意識からするとかなりあり得ない存在で、著者の岡本さんもこの本の執筆に取組むまでは毛嫌いされていたということですが、当時の情勢はステレオタイプな勧善懲悪が通用するほど単純ではなかったようです。

 

 曾国藩から李鴻章を経て清朝の宰相としての立場につくことになる袁世凱ですが、先代の両名とは異なり科挙に合格したワケではなく、乱世ということで自前の軍隊を持つということでのし上がったということで、それまでの中国だったらあり得ない経歴だといえそうです。

 

 結局は清朝の幕引きをすることになる袁世凱ではありますが、李鴻章などに従って、それなりに清朝の存続に尽力していたワケですが、西太后の死後、後ろ盾を失ったカタチで放逐され、その後、辛亥革命を成立させることになる革命軍に責め立てられた際に、宰相として都合よく呼び戻され、革命軍と相まみえることになります。

 

 ただ、最早清朝に統治能力はなく、内戦に付け込まれて西欧諸国や日本の専横を許すわけにも行かず、仕方なく"ラストエンペラー宣統帝溥儀に退位を迫ることになるというカタチになったということで、溥儀もあっさりと退位を受け入れたということのようです。

 

 この辺の経緯の理解のしにくさというのは、多分日本での大政奉還と同様で、そこに外圧という補助線を強調しないと理解しえないことなんだと思います。

 

 そういう意味でもなかなか理解しがたい存在ではありますが、こういう変わり身の早さというのはある意味現代の中国にも通じるところがあるのかな、という気はします。