「中国」の形成/岡本隆司

 

 

 『曾国藩』『李鴻章』『袁世凱』と清朝の宰相を取り上げたシリーズを紹介してきた岡本さんが岩波新書が出版している『シリーズ 中国の歴史』の1冊を執筆されているということなので手に取ってみました。

 

 『シリーズ 中国の歴史』は古代からこの本まで5冊で構成されているのですが、清朝末期の宰相3部作でわかるように岡本さんは清朝の時代が専門であるにも関わらず、近代までの執筆を押し付けられていて、200ページ弱のこの本で清朝崩壊後現代までの記述がわずか30ページに満たないという状況になっており、清朝以降でも十分あと1冊作れたでしょうに…という感が拭えません。

 

 ということでこの本のカバー範囲は清朝成立前後以降の中国の歴史ということになりますが、実質清朝の成立から崩壊までとなっています。

 

 清朝というのはかなりフシギな王朝で、この本で岡本さんも言及されておられるように、当時世界最強の帝国と言われた明朝に取って代わろうなんて野心はほとんど持っていなかったんじゃないか!?と思えるフシがいたるところに見られるようで、棚ボタと言ってしまうと言い過ぎかも知れませんが、割と偶然の要素が大きいようです。

 

 清朝が成立してからも、比較的少数の満州族出身の清朝支配層が圧倒的多数の漢民族を支配するということで、従来の秩序を維持した上で、かなり綱渡りの支配をされてきた半面、先例にとらわれ過ぎない斬新な政策の導入もあったようで、3部作で岡本さんが再三おっしゃっているように、ある意味現代につながる中国の近代化の基盤みたいなものは清朝において形成されたという側面があるのかも知れません。

 

 『袁世凱』の時にも触れられていましたが、成立時もフシギな感じであれば、崩壊時もアッサリ政権を引き渡してしまうといったフシギな感じで、中国史上稀にみる異民族による政権はかなりフシギな存在であったように感じられてなりません。