東大教授が教えるシン・日本史/本郷和人

 

 

 最近、精力的に歴史関連の著書を出版されている本郷センセイですが、歴史を学び始めて、なんかオモシロくないなぁ…と思っている小中学生に向けた歴史への興味を促す著作にも熱心に取り組まれていて、以前紹介した『ざんねんな日本史』同様、この本もそういう趣旨の一冊だと思われます。

 

 『ざんねんな日本史』では日本史上の偉人にフォーカスを当てて、あんな偉人でもこんな残念な側面があったということを紹介されていましたが、この本では教科書に出てくるような歴史上のオモテの事象について、背景となるウラ事情を紹介することで、歴史上の事象を単なる暗記モノのネタとしてではなく、立体的に捉えることによって、より状況を理解し、興味を持ってもらうことや、ありがちなカン違いを避けようという意図もあるようです。

 

 例えば、飛鳥時代奈良時代にかけて律令や都の整備、貨幣の発行など矢継ぎ早に「近代化」の施策が図られているように見えるのですが、その実、単なる制度面での整備に過ぎず、実効性はほとんどなかったようで、特に通貨はほとんど流通しなかったということで、実質通貨が一般的なったのは平安時代末期で、それも自国発行の通貨ではなく、宋銭だったというオチまでついています。

 

 そういう制度面の整備は、ただ単に当時朝貢外交を行っていた中国の王朝であった唐に対する体面に過ぎなかったということで、その後唐が衰えて遣唐使を廃止した後は、貴族層が政治に対するヤル気を失って、かなり荒れたことなども紹介されているところが興味をそそります。

 

 また、大和政権の成立以降天皇家が日本を支配しているように思えますが、概ねその勢力範囲は今の近畿地方より西側だったに過ぎないということも紹介されていて、実質的に中央集権的に北海道・沖縄を除く現在の日本が実効支配されたのは、秀吉の天下統一以降だったようです。

 

 などなど、多少は小中学生が興味を持って聞いてくれそうなネタを盛り込んでおられて、何とかこういうのを入り口に”沼”にハマってくれる子が少しでも出てくるといいですよね!?