ざんねんな日本史/本郷和人

 

 

 『日本史のツボ』など、新たな日本史への視点を提唱するマジメな本も魅力的な本郷センセイですが、『東大教授が教えるやばい日本史』など面白おかしく歴史を紹介して、あまり歴史に興味のない若い層に歴史の愉しみを訴求しようとする著書もいくつか執筆されていて、この本はそういった主旨の1冊の様で、歴史上の偉人の業績の裏側に潜む「ざんねんな」側面を紹介したモノです。

 

 まあ歴史に興味のある人からすれば、源頼朝足利義満の女好きや、武田信玄の男色、石田三成のビジネスライクな姿勢、水野忠邦の権力欲など、かなりありがちなモノなんですが、まあ、こういうのもあまり歴史に興味のない人が面白おかしくエピソードとして捉えるところもあるのかなぁ、という気はします。

 

 中には、紫式部がかなりのオクテで、大作『源氏物語』の恋愛エピソードのほとんどが妄想の世界の産物だということを捉えて、かなりイタいキャラだったんじゃないかというのはなかなか笑えるところです。

 

 必ずしもそういう「ざんねんな」ところを、揶揄するところばかりではなく、真田幸村を取り上げられているところで、関ケ原以降九度山に幽閉されて窮乏していた「ざんねんな」時期を経て、大坂の陣のために大坂城に入場し、敗死したモノの歴史上のその勇名をとどろかせたということも紹介されているのは、『真田太平記』のファンとしてはなかなかうれしいところでした。

 

 ちょっと笑いながら、楽しんで歴史上の偉人に触れることが、あまり歴史に興味のない人の入り口になって、深遠な世界に触れてもらえるのはいいことだとはおもうのですが、これってそういう動機で歴史に振れた人がホントにそこに進むことになるのかな!?というところには少なからぬギモンがあるのは正直なところなんですが…