百田尚樹の新・相対性理論

 

 

 排外的な言動や右寄りの論説で知られる百田さんですが、百田さんにしては珍しく、この本ではそういう側面は一切出てきません!(笑)

 

 さらに百田さんにしては珍しいことには、「人生を変える時間論」と副題にあるように、一見自己啓発書!?と思えるようなモノですが、読んでみるともうちょっと深遠な意図があるようです。

 

 元々、時間は物理的な長さではなく、如何に充実させるかという命題に想いが至って、この本の元となるアイデアをまとめ始めたようですが、人間はその歴史の中で如何にして自由になる時間を生み出すかということで、色んな工夫をして道具や機械などを生み出してきたということです。

 

 そもそもおカネも自分の時間と引き換えにして手に入れることが多く、おカネ自体よりも、失ってしまうと取り返しのつかない時間の方がおカネより貴重であり、おカネを貯め込んで使わないことが如何にムダであるかということを力説されているのも印象的です。

 

 さらには、あまりに時間を節約するための人類全体の努力が行き届き過ぎたが故に、逆に時間を持て余すことが出てきており、純粋に人生を充実させるため何だったらともかく、ただ単に「退屈」を紛らわすための様々な商品やサービスが提供されているということは、ある意味で人間の進化と逆行するという側面があると指摘されているのは新鮮なカンドーがあります。

 

 また、そもそもおカネというのは人生を充実させるためのひとつの手段であり、おカネを稼ぐために、自分が大切にしている家族や友人などとの時間を犠牲にするというのはある意味それはそれで時間の無駄遣いという考え方を提示されているのは、目からウロコであると共に、ハゲシく同意したいところでもあります。

 

 というように、如何に限られた時間をムダなく自分の人生の充実に資するように使うためには、普段からよくよく考えて取り組まないといけないということを思い出させてくれる、かなり深い示唆に富んだ本なんじゃないかと思いますので、百田さんの排外的だったり右寄りだったりする姿勢に反感を覚える人も、そういった要素は一切含まれておりませんので毛嫌いせずに、是非とも一読してもらいたいところです。