日米開戦と情報戦/森山優

 

 

 昨日に引き続き太平洋戦争に纏わる本です。

 

 真珠湾攻撃の際には、日本軍の暗号電文がアメリカ側に解読されて既にバレてて丸裸だったと言われますが、特に太平洋戦争開戦前の日米英など戦争当事国間のインテリジェンス活動が主要なテーマとなっています。

 

 ただ、必ずしもアメリカ側が情報戦で圧倒的に優位に立っていたワケでもなさそうで、日本側が意図して流したワケは無いようなので、かなりのクズ情報を重要視して空振りしたということもあったよう言うことなのですが、むしろその主要な原因は日本側の迷走ぶりにあったようです。

 

 よく言われるように陸軍の「北進」、海軍の「南進」といった主導権争いの上に、昨日の『真珠湾の代償』では老練な外交手腕がクローズアップされていた松岡洋右がここでは陸軍と海軍の対立に乗じて事態を混乱させるトラブルメイカー的な描き方をされており、定説通り対米開戦の主要な要因の一つとなったという描き方をされています。

 

 それに対してアメリカ側が、その戦略の適否はともかく指揮系統としてはローズベルト大統領が最終的な決定権を握っており、ポピュリズム的な政策に傾いたり、各種ロビー活動の影響を受けたりと、大統領を動かすための様々な策謀が蠢きます。

 

 そういう紐解きをしながら、なぜ攻撃が分かっていてそれを避けるようなアメリカ側の動きが無かったのか、日本側としてもなぜ決定的な打撃を与えるまでの攻撃をしなかったのかと未だ謎の多いモノではあります。

 

 いずれにせよ、圧倒的に物量が劣りながら、対中戦争をしつつ、対米英蘭と風呂敷を広げるのは未だに考えられないところであり、ガバナンスという考え方の欠如は今なお日本が抱える問題なのは、こういう破滅に進む道を再び辿らないかと不安になるところではあります。