唐/森部豊

 

 

 冒頭で「日本人で「唐」という名を聞いたことがない人は、まず、いないだろう。」と語られていますが、確かにその通りで遣唐使などを通じて「唐」という名前は誰もが知っているはずですが、ただ「唐」についてどれくらい知っているかというと、個人的にはかなり怪しいところで、太宗皇帝や貞観政要則天武后安禄山楊貴妃など断片的なモノにとどまり、初代皇帝の李淵すら知らなかったという体たらくで、この本で通史的に「唐」を学べたのは非常にありがたかったです。

 

 中国史の常として、中原を根拠地とする漢民族と周辺からの圧力との戦いという図式が唐にとっても例外ではなく、ワタクシ自身は唐は漢民族の国だと思っていたのですが、実は鮮卑という民族が出自なんだそうで、その後、漢民族に同化していくようですが、かなり意外なところでした。

 

 また、遣唐使なんかで知られる煌びやかなイメージもかなり一面的なモノのようで、外圧や内部の権力抗争が激しかったようで、多くの日本人が思っているほど安定的な政権ではなかったようにうかがえるのも、また意外なところでした。

 

 日本人にとって、かなり大きな影響を与えたということもあり、その概要を知ることは価値があることですし、この本はそういう意味でかなり価値の高いモノだと言えそうです。