逆境を生き抜くための教養/出口治明

 

 

 脳梗塞から復活されて、以前にも増してご活躍されているようにすら見える出口さんの著作です。

 

 脳梗塞で車椅子生活となって、マイノリティとしての視点で世の中を見るようになったということですが、70歳を過ぎて脳梗塞となり一旦半身不随になったにも関わらず、隠居的な発想を持たずに積極的に社会に関わろうとし、そういう観点でモノを見れるというのは、それまで「本・人・旅」によって培ってきた「教養」のなせるワザだとおっしゃいます。

 

 出口さん自身、あまり逆境を感じてこられたことがなく、脳梗塞とその後遺症からの復活は、日生在勤時代に当時の社長と対立して左遷された時以来だということですが、その時も今回も歴史上の人物に想いを馳せて、自身の置かれた立場を冷静に振り返ることができたからだということと、特に今回の「学長として復帰したい」という強い意欲を持つなど、大きなビジョンがあったからだということです。

 

 そういう「意欲」のために「あきらめる」ということを歴史上の様々な「逆境」から学ばれており、出口さんの場合、「学長として職場に復帰」するという意欲のために、「自分の足で歩く」ことをあきらめており、それに対して「学長として職場に復帰」するために必要な書くことや話すことに注力してリハビリに取り組まれており、プライオリティを置くべきものにフォーカスするために、一定の妥協が必要だということを、歴史上の事例を鑑みて「数字・ファクト・ロジック」に照らして、目の前のことを判断するという出口節が冴えわたります。

 

 こういう冷静な分析と、何としてもコトを成し遂げるんだという熱意を、70歳代半ばで、しかも脳梗塞の後遺症というハンディを背負いながらも突き進むという姿が眩いばかりで、なかなか難しいことだとは思いながらも、そうありたいな…と強く思わせるお姿で、まだまだ出口さんのバイタリティ溢れる活躍を見守るとともに、大いに応援させてもらいたいところです!