中国人が日本を買う理由/中島恵

 

 

 中国ウォッチャーというか、中国「人」ウォッチャーの中島恵さんの2023年5月出版の「中国人」本です。

 

 中島さんの著書を追いかけているだけでも、爆買いの頃から、一旦日本に飽きたというか、スルーするようになった時期を経て、コロナ禍の「ゼロコロナ」のロックアウトを経ての中国人の日本観みたいなモノをカバーされています。

 

 中国人は「ゼロコロナ」のロックアウトまでは中国共産党の統治に対して一定の支持をしていたように見えたのですが、「ゼロコロナ」のロックアウトを経て、かつての毛沢東文化大革命をちょっと思い出したのか、やはり中国において権力というのは何をしでかすのかわからない、という伝統的な肌感覚があるようで、以前とは違って一部の富裕層にとっては「中国を逃げ出す」という選択肢を手にしたということもあって、そのターゲットの一つ、というか主要な選択肢として日本を見ているという側面があるようです。

 

 というのも、以前から投資対象として日本の不動産を買い漁るといった現象も顕著だったのですが、あくまでも投資対象であって、中国を離れて買い漁った不動産に居住しようという中国人は少なかったようですが、「ゼロコロナ」を経て手近で、かつ欧米と比べても近くて住みやすい、さらには社会の安定性といった観点から、とりあえず日本に移住しようという富裕層が多いということで、中にはかなり長期の移住を視野に入れる人も少なからずおられるということです。

 

 ここのところの日本の政権の体たらくを見ていると日本社会の安定性なんて買い被りなんじゃないかとも思うのですが、それでもある日突然生活基盤が根底から損なわれるような状況変化が起こるとは思いにくいのも否定しがたく、移住してくるキモチもわからなくはないのですが、それ程の恐怖感があるということにもまたオドロきます。

 

 こういう中国への否定的な報道というのは、右翼系のメディアを始めとして多いので、眉にツバをしながら見ているのですが、多くの中国人の友人を持ち、かなりホンネに根差した意見を取材されている中島さんがここまでの政権への恐怖感を提示されているというのは、それなりにリアルな感覚なのかもしれない、と思わざるを得ません。