昨日に引き続き中国関連の本ですが、コチラも流行りの「反中」的なモノとは一線を画したモノで、かなりフラットに習近平政権を評価しようとしたモノに見えます。
著者の宮本さんは外務省のチャイナスクールのようで、2006~2010年にかけて中国大使も務められたということで、中国外交の実務を踏まえた観点で習近平政権を見られているようです。
宮本さんの後任として駐中国大使となられた丹羽宇一郎さんも先日紹介した『民主化する中国』の中で、日本で報道されるような習近平の権威主義的な側面を否定されていましたが、宮本さんも似たような評価をされているようです。
さらには中国共産党自体が、日本での印象と異なりかなり国民の意向というモノを強く意識していて、それほど国民の意向とかけ離れた政策は選択できないと思っていると言及されていて、だったら文革や天安門やゼロコロナは何だったんだ!?というツッコミはあるのですが、一旦そういう方向に振れることはありながらも、経済的な繁栄を求めた鄧小平の開放政策など、驚くべき転換を図ったことは、原理主義的な観点からは一定程度自由なところがあることの証左と言えるかもしれません。
特に昨今、ロシアのウクライナ侵攻を経て、新たな冷戦構造ということで、日本のメディアでは中ロの接近が報じられますが、必ずしも中国が新ロシアということではないというのは、冷戦時の中ロの対立を思い起こせば理解できるのですが、最早そういう構造を忘れているというか知らない人もいるかも知れないということがありながら、基本的に隣国同士は仲良くできないということを考えても、ある程度の妥当性はあり得ると思え、逆に中国をアチラ側に追い込みかねないアメリカのスタンスには危ういモノを感じるところもアリ、地理的に近い日本としてはあまりそういうスタンスに同調しすぎるのは危険極まりないと思えます。
まあ、チャイナスクールの意見だという穿った見方もあるでしょうけど、色んな現象についての言及を見ていると、ツジツマがあっていると思える部分も少なくないので、こういうところも見た上での意見形成というのは大事なんじゃないかとは思えます。