勝ち上がりの条件/半藤一利、磯田道史

 

(032)勝ち上がりの条件 軍師・参謀の作法 (ポプラ新書)

(032)勝ち上がりの条件 軍師・参謀の作法 (ポプラ新書)

 

 

 『昭和史』の半藤さんがNHKの歴史番組でおなじみの磯田さんと軍師・参謀について語られます。

 山本勘助竹中半兵衛黒田官兵衛といった戦国時代の軍師から、徳川家康の腹心の本多正信のような軍師というよりも参謀というべき人、日露戦争時の秋山真之のような作戦参謀など数々の軍師・参謀について語られるワケですが、それらの人たちって、当然智謀に溢れているワケですが、あまり“智”が立ち過ぎると足元を掬われる部分もあるということで、その辺りの“保身”のためのバランスも必要なようです。
 
 そういう側面から、上杉景勝の参謀であった直江兼続関ヶ原前後の対処について、お二方がかなり批判的な論評をされているのが印象的でした。

 軍師・参謀がテーマなんですが、現代においてもナンバー2としての世渡りに通じるところもあって、興味深く読めました。

 

池上彰の政治の学校

 

池上彰の政治の学校 (朝日新書)

池上彰の政治の学校 (朝日新書)

 

 

 池上さんによる“日本の政治入門”です。

 この本は民主党・野田政権時に出版された本なのですが、民主党政権が大コケして政治への閉塞感がハンパない頃で、何とか政治への関心をつなぎとめようということで書かれたのかな!?と思わせるような本です。

 中学校の公民の授業で習うような基本的な制度面に関する紹介から、実勢の政治のメカニズムに関する解説、諸外国との制度面・現象面でに比較など、ひとしきり日本の政治を取り巻く状況をまんべんなく紹介されていて、自民党政権になった今でも充分に“入門書”としての役割を果たす内容になっています。

 ひと頃、自民党の若手議員が相次いで不祥事を起こし“魔の2回生議員”というコトバ
が取り沙汰されましたが、実は小選挙区制というのは“風”に乗ってあまり質の良くない
議員が当選することがあって、議員を育成するのが難しいとされています。

 同じ小選挙区制をとるイギリスでは政党が当選回数の浅い議員を教育する制度が整備されているということで、日本の政治環境の遅れが顕著であることを指摘されています。

 あとは環境の役割や態度などニュースを見ていて腑に落ちなかったことが、この本を読んで理解できるところがあったなど、ある程度以上に政治に関心の強い人にも満足できる内容の本なんじゃないかと思います。

 

まだ東京で消耗してるの?/イケダハヤト

 

 

 東京から高知県限界集落に移住して、プロブロガーとして活躍されている方の“地方
移住のススメ”です。

 地方に移住したい人も少なからずいて、過疎に悩む地域で移住してくれる人を求める所も多いにも関わらず、自治体などのマッチングの成果はあまり芳しくないようです。

 多くの移住者が抱くであろう、雇用の確保や子弟の教育、コミュニティへの溶け込みといった問題ですが、ネット環境の充実や“地方”の環境の変化により、徐々に移住がしやすい環境が整いつつあるようです。

 特に雇用の確保なんですが、会社員のように1つの雇用で生計を立てるだけの稼ぎを得るのは難しいかもしれないのですが、細々とした仕事をいくつも兼ねることによって、それなりの収入を得ることができるようです。

 何せ、特に“住”のコストを始めとして生活にかかるコストが圧倒的に安く、子育ての
環境としてもよく、ストレスが圧倒的に少ないなど、都会と比べてかなりアドバンテージがあるようです。

 コミュニティへの溶け込みにしても、いきなり都会から限界集落みたいなところに移住するのではなくて、まず大都市圏から地方都市へ移住して、自分にあった環境をリサーチしながら徐々に好ましい環境を求めていくといったアプローチを勧められています。

 この本を読んでいると、都会に住んでいるのがバカバカしくなってきますね…(笑)

 

教養は児童書で学べ/出口治明

 

教養は児童書で学べ (光文社新書)

教養は児童書で学べ (光文社新書)

 

 

 出口さんが語る児童書の魅力です。

 児童書って、メインのターゲットはコドモなのですが、カンタンだとか内容が理解できるように、かつ飽きっぽいコドモが最後まで付き合えるように、かなり内容や装丁などに工夫が凝らされているようです。

 ワタクシもムスメたちが小さい頃に読み聞かせをしてて感心した記憶がありますが、出口さんは想像もできないような深い読み方を提示されています。

 例えばワタクシもムスメに読んだ記憶があるエリック・カールの『はらぺこあおむし』ですが、食べ過ぎたらお腹が痛くなるよ、と言う警告とか、幼虫が成虫になっていく過程等も含めて進化論的なことを紹介されているところとか、全宇宙がこの本の中にあるとまでおっしゃられています。

 その他にも幾多の名著の紹介をされているのですが、児童書の中では、友情や裏切り、思いやりや市の悲しみと言った、人生のあらゆる局面で接するんだけど、コドモがナマで接するにはちょっとヘビーなんだけど、いずれ学ばなければならない人生の局面を、その年代なりに受け入れられるであろう表現で提示されていて、徐々に人生の真実を学ぶ助けになっているようです。

 もうウチでは、ムスメたちに読み聞かせをする年代はとっくに過ぎてしまいましたが、これからそういう機会がある人には、是非この本を読んだうえで、読み聞かせをしてあげて欲しいものです。

 

「司馬遼太郎」で学ぶ日本史/磯田道史

 

「司馬?太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

「司馬?太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

 

 

 NHKの歴史関連の番組で奇抜なスーツを着てニヤニヤ笑いながらコメントする、ぶっちゃけ気味の悪い歴史学者に記憶があるかもしれませんが、その磯田さんが司馬遼太郎の著作を通して日本史を語るという本です。

 「司馬史観」というコトバで語られるように、司馬遼太郎さんの関連資料を丹念に調べあげた上での史実を重視した執筆スタイルだったことから、小説の世界に限らず、一般的な歴史の解釈にまで影響を及ぼすようになっているとのことです。

 ただ歴史学者は「あくまで小説」ということで無視を決め込むのが一般的な姿勢のようですが、磯田さんがそこを曲げて司馬遼太郎の小説世界を通して日本史を語ることにトライされたという趣旨のようです。

 司馬さんの代表的な著作の多い、戦国時代(『国盗り物語』)、幕末(『竜馬がゆく』)、明治時代(『坂の上の雲』)を通して歴史を語るということなんですが、結局司馬作品への評論っぽくなってしまっているのは、仕方がないのかな、というか企画ミスだったかもしれません。(司馬さんのおかげで、本は売れたでしょうけどね…)

 ただ、歴史家らしい司馬作品の読み方もあって、それはそれで面白かったんですけど、ちょっと肩透かしですかね!?

 

システムを「外注」するときに読む本/細川義洋

 

システムを「外注」するときに読む本

システムを「外注」するときに読む本

 

 

 NECソフトでのSEを経てITコンサルとなり、政府のCIO補佐官を務められている方が書かれたシステム発注側の“心得”です。

 実はワタクシ、かつてSEとして要件定義の現場にいたことがあるのですが、ストーリー形式でまとめられたこの本を読んで、かつてのイタイ記憶を思い起こさせられたりしました…

 この本で再三強調されているのは、ベンダにお任せではなくて、発注側がシステム開発プロジェクトの一メンバーとして主体的な姿勢で臨まなくてはならないということです。

 確かにITに疎くてシステムっていうと尻込みをしたくなるキモチもわからなくはないのですが、逆にベンダ側はシステム化する発注側の業務の進め方については、過去の類似プロジェクトで似たケースを経験している場合はありますが、細かい業務の回し方などは知らないはずで、そのあたりを積極的に開示していく必要があるのですが、なかなかそういう前向きな行動は少なく、要件を取りまとめるシステム部門の責任者が孤立するだけではなく、集中砲火を浴びることもあるようです。

 さらにワタクシ自身はベンダ側の立場の経験しかないので意識しなかったのですが、システムをベンダに発注したからと言っても、システムの効果を十全に享受できるようになるかどうかのリスク管理はあくまでも発注側にあって、リスクのタネを目を皿にして監視し続ける必要があるということです。

 今後AIの発展により、さらに多くの業務がIT化されていくことが見込まれますが、そんな中で、この本に書かれているような姿勢を自社に根付かせることが、企業存続のカギになるのかもしれません。

 

英語はもっと科学的に学習しよう/白井恭弘

 

 

 UCLASLA(Second Language Aquisition:第二言語習得)を研究されている方が語る英語習得法です。

 そういう科学的な英語習得の手法なんですが、そんなに特別な方法ではなくて、自分が理解できる内容の英文を繰り返し聴くことが肝要といった、よく言われる英語学習のコツが科学的にも正しいんだということを知ってちょっと勇気がわきます。

 ということで、“科学的”と言っても特別なことが必要なワケでなくて、どっちかと言うと“ありがち”な手法が、意外と正しくて、それを淡々とこなしていくことが重要なんだということを説かれます。
 
 しかもそれを悩み相談のQ&Aみたいなパートもあるので、より分かりやすいと思います。