日本サッカーはなぜシュートを撃たないのか?/熊崎敬

 

日本サッカーはなぜシュートを撃たないのか? (文春文庫)
 

 

 かなりディープに現地に入り込んだ取材で知られるサッカーライター熊崎さんの日本サッカーにまつわるエッセイ集っぽい本です。

 ありがちなタイトルですが、このテーマばかりを取り上げているワケではなく、いろんなネタがちりばめられているんですが、そこかしこにこのテーマにまつわることが書かれます。

 最初の方の記事で、熊崎さん自身がガーナで取材をしている時に、如何に取材の目的を達成することが日本での取材に比べて難しいか、という「非効率性」について語られるのですが、翻って日本では、ほぼ何でも必要なものは、おカネさえあればカンタンに手に入るということで、そのことが日本人サッカー選手が、シュートを撃たずにパスを回すことにつながっているんじゃないか、という仮説を展開されます。

 というのも、アフリカや南米では、何かを手に入れようとして、目の前にあったら手段を問わず手を伸ばさなければ、次にいつ手に入るチャンスがあるかわからない、ということで、サッカーにおいても、シュートが入るスキを少しでも見出したら、迷わず撃つ、というのは、そういう背景故ということもあるんじゃないか、ということです。

 あとは、香川がプレミアで活躍できなかったことの原因として、ジュニア世代から染みついた日本サッカーに遠因があって、基本的に1対1にならないように組織で守る日本の考え方に対し、日本代表の海外組がよく言うように、ヨーロッパでは、まず1対1に勝つことが求められるということです。

 そういう文化的、経済的な背景までもプレースタイルに影響を与えるとは、サッカーとは何と深遠なスポーツなんでしょうか…