PITCH LEVEL/岩政大樹

 

 

 南アW杯日本代表で鹿島アントラーズの黄金期を支えたDF岩政選手の著書です。

 この本、今まで読んだ数多くのサッカー本とかなり趣が違っていて、単なる有名サッカー選手のクロニクルというワケでもなく、教本的なモノでもなく、岩政選手がサッカーについて考えてきたことを語るといった感じの本です。

 しかしこれがモノ凄く惹きつけられるのです…これまで読んだサッカー本の中で一番強い印象を受けた本かも知れません。

 というのもサッカー選手が書かれた本って、どこか感覚的なモノが多くて、サッカーのプレー経験のないワタクシにとっては、キモの部分が理解できないというもどかしさを感じる本が多かったのですが、岩政選手自身曰く、天才的な感覚やズバ抜けた身体能力がない(前者はともかく、後者については定評があったところなんじゃないかと思うのですが…)中でサッカー選手としてやっていくには考えて考え抜いてプレーをしていくしかないという想い、かつ大学時代に数学を先行されていただけあって、物事を論理的に整理することが得意であり、好きでもあったことから、サッカーの局面局面において考えてきたことを、事細かに“言語化”して再現した、シロウトのワタクシにでも手に取るようにわかるレベルで語られた本が出来上がったというワケです。

 実はこの“プレーの言語化”というのは日本においては“頭デッカチ”とか言われてネガティブに捉えられることが多いのですが、サッカー先進国のスペインやイタリアにおいては、プレーの再現性を確保するということにおいて重視されることが多く、岩政選手が日本代表の時に監督だったザッケローニ氏は、サッカーに関する言語化の度合いがすさまじかったようです。

 例えば、戦術ということについては、“メンバーの間で戦い方を共有するためのもの”とおっしゃられていることとか、“マリーシア”と“ラフプレー”の違いが、“先が見えた上でやっている”のか“場当たり的”なのかと違いを示されているなど、なんとなく使ってしまっているサッカーに関するコトバを、誰にでも腑に落ちるように語ろうとしているように思われます。

 こういった“プレーの言語化”というのはサッカーを指導する上で重要でしょうし、こういうことを意識されている岩政選手はきっと将来優秀な指導者となることでしょう。

 なお、この本はちゃんと脚注も読んでください…そこに岩政選手の考えのエッセンスが込められていますので…