負けるぐらいなら、嫌われる/田中史朗

 

 

 2015年ラグビーW杯で、南アフリカを破る快挙を成し遂げた日本代表のキーパーソンの一人である、スクラムハーフ・田中選手の回顧録です。

 身長166cmの小さなカラダで、パッと見、朴訥な人柄に見えながら、闘志あふれるプレーでジャパンを引っ張った姿が思い起こされます。

 タイトルは、ジャパンの中でいち早くスーパーラグビーに参戦していた田中選手が、W杯前のジャパンの練習を見て、そのヌルさに激怒して、ジャパンの同僚に一喝したことから来ているようです。

 でも、田中選手自身、そういうおおよそ揉め事を好むタイプではなく、大学時代など、先輩後輩の区別をなくすべく心を砕いていたことなど、フランクな人柄で知られていることから、余程「勝ちたい」ということを突き詰めた故なんだと思われます。

 田中選手と言うとW杯後に、スーパーラグビー参戦時やW杯参戦前に奥様に「自分が死んだら、いい人を見つけてくれ」というエピソードが有名になりましたが、この本の最後に奥様を交えた対談があり、ほほえましいやり取りが見られるのも一興ですよ!

 

マネジメント[エッセンシャル版]/ピーター・F・ドラッカー

 

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

 

 

 とうとう手を出してしまいました…難解だということだったので、恐る恐る…

 でも、[エッセンシャル版]だったからなのか、かなり要点をキチッと押さえてあって、むしろ他のダラダラと例示の長い翻訳モノよりもずっとわかりやすかったです。

 それよりも、ワタクシは以前中小企業診断士の受験をしていた時期があって、そのうちの1科目である企業経営理論というのがあるのですが、その内容のかなりの範囲がこの本の内容と被っているんですね!?

 ということは、現代における企業経営の「教科書」的な位置付けとも言えるということで、ほぼ「見たことがある」内容だったからわかりやすかったのかも知れません。

 でも、「教科書」とはいうモノの、この本の内容を忠実に実践して、「イノベーション」を誘発できるような組織を実現している企業って、どれくらいあるんだろ…

 

「怒り」のマネジメント/安藤俊介

 

「怒り」のマネジメント術 できる人ほどイライラしない (朝日新書)

「怒り」のマネジメント術 できる人ほどイライラしない (朝日新書)

 

 

 ワタクシ自身かなり短気なことを自覚していて、イライラすることも多くて、怒りに任せたコトバで公開したことも、少なからずあります。

 ということで、この本は「アンガー・マネジメント」と言われる、アメリカで提唱されている、怒りを「マネジメント」するという考え方を紹介した本です。

 冒頭で、とにかくいろんな意味で「怒り」という感情は、マイナスに作用することが多いということを強調されています。

 また「怒り」が少ないことでのメリットも同じく、強調されています。

 そんなの分かってるよ!とおっしゃる方も多いかと思いますが、それをクドいほど強調されたうえで、じゃあ、それを如何にコントロールするか、ということを紹介されています。

 印象的だったのは「怒り」は「アレルギー」に似ているという指摘で、「怒り」による反応や、体調への悪影響などの類似点を語り、その解決策を探ります。

 まずは「怒り」が発生した時の対処療法ということで、「怒り」が発生しても、衝動的な反応を避けるための方法論を紹介されていて、怒りのレベルを数値化してみようとか、「かわいい毒」を吐いてみようとかといった方策を紹介されています。

 さらには、自分がどんな場面で「怒り」を感じるのか、ということを明確に自覚しておくことによって、「怒り」にくい体質になるような体質改善を行うことで、中長期的に「怒り」から解放されやすくなるということです。

 怒ることそれ自体は、人間何で仕方ない…という観念の上で、じゃあ、それにどう対処するのか?と切り分けてくれているところが、実行しやすいところなのかな、という気がしました。

 これに基づいてワタクシも…

 

さらば、ヘイト本!/大泉実成・加藤直樹・木村元彦

 

さらば、ヘイト本!  嫌韓反中本ブームの裏側

さらば、ヘイト本! 嫌韓反中本ブームの裏側

 

 

 イビチャ・オシムのバイオグラフや旧ユーゴスラビア紛争関連の著作で知られる木村元彦さんが絡んでいるから、と言うことで手に取ってみたのですが、何とも情けない想いの募る本です。

 というのも、最近は多少下火になっているものの、2015年初頭まで、韓国や中国を排斥する内容の、いわゆる「ヘイト本」がベストセラーの上位を占めるという現象がありました。

 反韓・反中は、むしろ両国の反日の動きが招いたものだ、という主張があるかもしれませんが、こういった風潮の中で出版され、一部はベストセラーにすらなった「ヘイト本」は、ただ単に怪しげな出版社の売らんかなの煽り文句に乗せられ
た、根拠の乏しいモノであることが多く、そういう煽りに乗ってヘイトスピーチが盛り上がってしまったという側面もあるようです。

 最近何かやたらと日本国民の国民の高さを誉めそやして、気配りだのおもてなしだのと、精神性を賛美する文句が目につきますが、こんな「ヘイト本」がベストセラーになる国の何が「おもてなし」なんだか!?と思うと悲しくなります。

 くれぐれも皆様が、こんなモンに乗せられることがありませんように…

 

ラーメンと愛国/速水健朗

 

ラーメンと愛国 (講談社現代新書)

ラーメンと愛国 (講談社現代新書)

 

 

 戦後の世相とラーメンの変遷を、それぞれ相互に及ぼした影響について語られます。

 着想としては非常に面白いと思いますし、世相がラーメンに、逆にラーメンが世相に及ぼした影響についての記述については、ホントに面白い部分があるのですが、ラーメンに関係ない世相の記述がやたらと長くて、前振りしてもそれはないやろ!?って感じで、ラーメンだけで1冊持たせるだけのネタがなかったんでしょうけど、雑誌ライターが単行本を書いた時の悪弊が顕著にでています。

 せっかくメインテーマの部分が興味深いだけに残念です。

 これで本についての言及を終えるのはもったいないので、ちょっと内容にも触れておきますと、最近のやたらと日本の文化を持ち上げる風潮と同調して、元々中華から出てきたラーメンの「和風化」が顕著となってきていて、ラーメン屋と言わず麵屋と言ってみたり、魚介を使ったスープが人気を集めていたり、店の構えも「和」を意識したものが多くなっているところなどは、なるほどなぁ…と感心しました。

 そういった比較文化論的な内容は、部分的にスルドいモノが多く見受けられました。

 それだけに…残念!

 

マラソンと日本人/武田薫

 

マラソンと日本人 (朝日選書)

マラソンと日本人 (朝日選書)

 

 

 日本における競技としてのマラソンの黎明期から市民マラソン全盛の現代までのマラソンの歴史を辿った本です。

 日本人のマラソン好きというのはつとに語られるところですが、ストイックに競技に取組む姿勢というのが、日本人の美意識にマッチしているんだなぁ、ということなんですかね!?

 かつては世界でのトップを伺うような競争力があったのですが、リオ五輪では入賞すら遥か遠くに霞んでいるような状況に陥っています。

 そういった流れをこの本で見ているうちに、日本のスポーツ界にありがちなシガラミというものが鼻にツイてきます。

 日本の競技団体の閉鎖的な体質が、世界のトップの急激な進化についていくことを阻んでいるというのは、マラソンにせよ、ラグビーにせよ、多くの競技で見られることですが、そういう「お山の大将」で満足するメンタリティが残念でなりません。

 市民マラソンが盛んになっているのはいいことだと思うのですが、それを全く競技レベルの向上に繋げていないというのは、マラソン界のビジョンの欠如と言えそうです。

 こうした人気に甘えずに、より高いところを目指す意識を持ってほしいものです。

 

ソース/マイク・マクマナス

 

ソース~あなたの人生の源は、ワクワクすことにある。

ソース~あなたの人生の源は、ワクワクすことにある。

 

 

 『年収を上げる読書術』の推薦図書の紹介も、最終盤に差し掛かっておりますが、その中でも、この本がベストになりそうです。

 「ワクワクすること」に取組むことで成功する、というのは、本田健さんが勧められていて、日本でも少しずつ広がりつつあるのですが、アメリカの自己啓発本ではスタンダードなようで、昨日まで紹介していたバッキンガムさんの「強みを活かす」というのも、そういう流れの本の一環とも言えるでしょう。

 『年収を上げる読書術』の推薦図書には、そういう趣の本が多くて、ここのところずっと「好きなことをして成功する」といった感じの本を読んでいて、やっぱり好きなことに没頭している人には敵わないよなぁ…みたいな感じで「洗脳」されつつある(笑)わけですが、この本は、そういう本のうちでも極北と言えるかもしれません。

 というのも、ワクワクすると思ったことはなんでもやってみよう!そうしているウチに、そんな中から「天職」がやってくる!それなのに「常識」に捉われて気が進まない仕事をやり続けるの?…みたいなことをおっしゃられるのですが、結局、そういう「勇気」を持った人だけがシアワセになれるのかも知れないですね…