ダントツ企業/宮永博史

 

ダントツ企業―「超高収益」を生む、7つの物語 (NHK出版新書 544)

ダントツ企業―「超高収益」を生む、7つの物語 (NHK出版新書 544)

 

 

 東大工学部を卒業しながら東京理科大マーケティングの教鞭を取られているというある種異色の経歴を持つ方が、「ダントツ」の業績を上げている7つの企業の戦略について紹介されます。

 7つの企業の中には、誰もが知る企業があったり、知る人ぞ知る企業でありながら、知らないうちに日本中の数多くの人がその製品を使っているたりする企業を取り上げられます。

 セブン銀行ウェザーニューズなんかはご存知の方が多い企業なんだと思うのですが、その戦略の特異さについて知る人は少ないんじゃないかと思います。

 セブン銀行だったら、本来競合となるはずの銀行を顧客と位置づけ、本来銀行のビジネスモデルにおいて不可欠であるはずの投資業務を持たずに、銀行からのATM手数料収入を収益の軸とした、銀行業務の常識としては“あり得ない”ビジネスモデルを成功させたということです。

 またタクシー業界で知る人ぞ知る企業である中央タクシーは、本拠地である長野で開かれた長野オリンピック向けの配車に背を向け、その年の業績ではその地域の競合他社に後れを取ったものの、そこまでして地域の顧客を優先した姿勢が評価され、その後長きに渡り地元のトップ企業として君臨しているようです。

 そういう意味で業界の“常識”のウラをかこうとする姿勢が、抜きんでるためには不可欠の姿勢と言えるのかも知れません。

 ということで、自分の企業がどういったらいいかということについて、制限を付けずに考え抜くことが、難しいとは思うのですが、必要なんでしょうねぇ…

 

強運のチカラ/前田義子

 

強運のチカラ: 思いどおりに自分を生きる

強運のチカラ: 思いどおりに自分を生きる

 

 

 ファッションデザインを手掛ける会社を経営されている方が書かれた自己啓発的なエッセイなのですが、ヨメに「借りといて!」と言われたので、ヨメに渡す前にワタクシも読んでみました。

 こういうしなやかでオシャレな女性のエッセイっぽい人生訓って、これまでもよくあったと思うのですが、この本を出版された2017年時点で著者の“ミスリン”こと前田さんは還暦を迎えられたということで、修羅場をくぐってきたことをあからさまにおっしゃるワケではないのですが、どこかしら土性骨の座った感じは、やっぱりそういう経験をふまえてのことなんだろうなぁ、と想像させられる深みがあります。

 “強運”とタイトルにありますが、あんまり運命論が前面に出るワケではなくて、周囲への感謝と強烈な自己肯定感こそが、思ったように人生を送る原動力となっているようです。

 昨日の自己啓発本ジャンキーの後味の悪さの、良い口直しになった感じです。(笑)

 

サラリーマンだけが知らない好きなことだけして食っていくための29の方法/立花岳志

 

サラリーマンだけが知らない好きなことだけして食っていくための29の方法

サラリーマンだけが知らない好きなことだけして食っていくための29の方法

 

 

 樺沢紫苑さんが最新の著書を推薦されていたので、図書館のサイトを検索したところ、その本はまだ収蔵されていなかったのですが、タイトルが気になったこの本があったので手に取ってみました。

 このタイトルって、自己実現系のビジネス書にハマった経験のある人だったら、結構気になるとは思うのですが、千田琢哉さんの著書にありがちな装丁を見た時にちょっとイヤな予感がしたりしながら読み始めると、冒頭から猛烈な違和感を感じながら読んでいたのですが…

 この方、ビジネス書や自己啓発書を読んでいるうちに、自分の境遇に違和感を感じて「自由」になろうということで「プロブロガー」になり会社を辞めてフリーの立場となり「自由」を手に入れたということなんですが、この本では自分がシアワセになった姿がほとんど描かれず、この人は何がシアワセなのかが全くこの本からは読み取れません。

 しかも“29の方法”と言うのが、ほとんどベタな自己実現系の本からの引用で、その本のほとんどが既読のワタクシにとっては、この時間をどうしてくれるんだ!?状態です。

 そういう自己実現系の本を愚直に実践して、著者曰く“成功”を手に入れたことは称賛されるべきなのかもしれませんが、他人の人生をなぞって何が面白いのか!?

 この人のセミナーにもそれなりの人が集まっているようですが、それって自己啓発本ジャンキーが偶然成功した先達を、自分もそうなれるかも…という幻想をあおってるだけに見えます。

 これって自己啓発本ジャンキーを食い物にする自己啓発本作者そのものなんじゃ!?

 

なぜ、あの人はいつも好かれるのか/本田健

 

なぜ、あの人はいつも好かれるのか (単行本)

なぜ、あの人はいつも好かれるのか (単行本)

 

 

 かなり久々に本田健さんの本を手に取ってみましたが、いつもの健さんの“大好きなことをして幸せな小金持ちになる”テイストはかなり希薄だったりするのですが…

 ムリに人に好かれる必要はない、とソッポを向かれる人もいるとは思うのですが、健さん的には周囲の人に応援してもらうことが、“幸せな小金持ち”の重要な要素のようなので、そういう方向性からのアプローチみたいです。

 「好かれる」と言ってもやたらと相手に媚びるワケではなく(そうすると逆に信用されない!?)、相手のことを尊重して相手の意向を汲んだ上で行動することが「好かれる」ことにつながるようです。

 それもやたらと自分を抑えるのではなく、自分の感情やホンネもある程度露わにしながら、でも相手のことを理解しているんだよ、ということを相手に示すことで相手からの信頼を得られるようです。

 先日紹介した『「嫌われるのがこわい人」のための自己主張レッスン (PHP文庫)』でも触れられていましたが、ちゃんと自分を尊重できない人は他人を尊重することもできないということで、自分の感情も大事にしつつ相手の事情を慮るというバランスを取れるということが「好かれる」ことにつながるようです。

 その辺のバランスはムズカシイとは思うのですが、なんとなく腑に落ちるような気がした内容でした。

 

売れないものを売る方法?そんなものがほんとにあるなら教えてください!/川上徹也

 

 

  「ストーリーブランディング」の川上さんがこのタイトルで本を 「ストーリーブランディング」の川上さんがこのタイトルで本を書いて欲しいと編集者から言われた時に、そんなものをがあるんだったら、自分が教えてほしいモノだとおっしゃったということを冒頭で紹介されていますが、商品を一切変えることなく、“売り方”を変えることで売上を伸ばす方法を紹介して欲しい、しかもマーケティングの専門的な用語を遣わずに…と言われて川上さん自身に火が着いたようです。


 川上さん自身、反省とともにおっしゃっているのが、原理的というか、これまでの著書では理論が先行した内容のものが多かったということで、単純に“何をしたら売れるか?”ということにフォーカスした内容になっています。


 で、何をしたら売れるか?ということについて、ある程度商品のクオリティが高いという前提で、試してみるべきこととして、


   1.「ウリ」を変える

   2.「売る時間」を変える

   3.「売る場所」を変える

   4.「売る人」を変える

   5.「売る値段」を変える

   6.「売る方法」を変える

   7.「売る目的」を変える


ということで、7つに分けて「売る」方法を、メディアなどで紹介されたなじみのある方法も含めて紹介されています。


 一応、マーケティングの専門用語を避けた上でということなので、最初はおっしゃっていませんが、実はこの7つというのが“5W2H”というフレームワークに沿っていて、それぞれ、


   1.「ウリ」を変える → What

   2.「売る時間」を変える → When

   3.「売る場所」を変える → Where

   4.「売る人」を変える → Who Whom

   5.「売る値段」を変える → How much

   6.「売る方法」を変える → How

   7.「売る目的」を変える → Why


に該当するということです。


 確かに「ストーリーブランディング」は魅力的な手法ではあるのですが、何のサポートもナシに、何のリソースもない中小の店舗でそれを実行するのは、結構ハードルが高いなぁとは感じていたのですが、この方法だと、この本で紹介されている切り口でああでもない、こうでもないと考え抜けば、何らかの成果は得られるんじゃないかという希望が湧くんじゃないかと思います。


 確かにブレイクを果たした『物を売るバカ2 感情を揺さぶる7つの売り方 (角川新書)』以前も含めて、素晴らしい著書をモノにされてきた川上さんですが、個人的には最高傑作かな、と思います。


 最近このブログでは編集者の安易なクソ本を垂れ流すことをディスることが多かったのですが、この本に関しては編集者の方のクリーンヒットを称えたいところですね!?

40代でシフトする働き方の極意/佐藤優

 

 

 「知の怪人」佐藤さんにしてはかなり珍しく“こちら側”のおハナシをされます。

 その分、佐藤さんの他の著書での尖った感じはないので、多少肩透かし感がなくもないのですが、とてつもない修羅場をくぐって来られた佐藤さんならではの人生訓が詰め込まれています。

 なぜ“40代”なのかというと、40代に差し掛かると特に会社勤めの人にとってはある程度先が見えてくるということで、そのまま頂点を目指していく人と、別の道を見出した方がいい人が明確に分かれて行くということです。

 だからこそその時点でその後の人生の展望をしっかりと考える必要があるのですが、特にその必要性の強い“別の道”を歩むべき人が、そのまま惰性で残りの人生を過ごしてしまうことに警鐘を鳴らす意味もあってのこの本のようです。

 そういう観点から、どういう人生設計をするかによって、人とのつながりを見直したり、やるべきことの“選択と集中”を考えて行くべきだということです。

 そんな中で印象的だったのが、会社の中で頂点を目指すべきポジションにいられないことが、必ずしも“無能”ゆえではないということと、それ自体が“負け”というワケでもないので、そこを引きずることなく、その後の人生を如何に充実されるかということに注
力することがよっぽど有意義だとおっしゃいます。

 ワタクシ自身も明らかに膾炙の中では“負け組”なんですが、そういう人たちに再起のための取組に向けて背中を押してくれる本ですので、身に覚えのある人は、是非とも手に取ってみて下さい!

 

歴史の勉強法/山本博文

 

 

 日本近世史を専門とされていて、東大で教鞭を取られている方が教える「歴史の勉強法」です。

 「歴史の勉強法」といっても受験科目としての歴史ではなく、教養のひとつとしての歴史を身に付けるという意味での“勉強”だということなのですが、冒頭の部分を読んでいるとかなりアカデミックな志向が伺えて、ちょっとひるんでしまったりする人もいるのではないかと思ったのですが、読み進んでいくと意外と取っつき易くて、楽しんで読めました。

 歴史の研究者としては古文書を読み解いて分析できるだけのスキルが必要だということで、上級編ではそういったことも取り上げられているのですが、“教養”として歴史を身に付けるという意味では、歴史のある時点を、今我々が生きている社会と同じように“生きた”社会として捉えられるようになることが必要だとおっしゃられているのかな、と感じました。

 そういう意味で歴史のある事象だけを取り上げるのではなくて、制度面や経済面など、どのような環境でそういったことが起こったのかという背景を理解しておくことが重要なようです。

 特に中級編の「歴史の現場を歩く」という章が興味深くて、歴史上の事象が起こった場所や博物館などを訪れた際の観点が紹介されていて、ぜひ実践してみたいと思いました。

 割と高度な内容の本だとは思うのですが、あまりそうは感じさせない感じで、歴史には興味があるけれど、どこか取っつきにくいと思われている人に取って、いいヒントになる本なんじゃないでしょうか…