明治維新とは何だったのか-世界史から考える/半藤一利、出口治明

 

 

 以前紹介した『世界史の中の日本史』での対談が印象的だったお二方が今回は同様の趣旨で明治維新を語られるということです。

 最近は「反薩長史観」に関する著書も目立ってきた『昭和史』の半藤さんなのですが、世界史関連で多くの著書がある出口さんと再びタッグを組まれるということで俄然期待が高まったのですが、世界史と絡む部分はアメリカがなぜあの時期に日本に開国を迫ったのかというところと、岩倉使節団の意義、太平洋戦争の遠因としての日露戦争の位置づけということろ意外は希薄で、ちょっと編集者の売らんかなのサモシい根性がもたらしたサブタイトルなのかなと…

 ただ明治維新以降のグランドデザインの源流を日米和親条約締結時の老中阿部正弘に求めるところや「日本人」たる意識のパイオニアとして勝海舟を位置づけて、その思想を受け継いだ西郷隆盛坂本龍馬がその後の維新の原動力となったことなどを興味深く読めます。

 ただ『世界史の中の日本史』と比べると出口さんが半藤さんに師事するというスタンスを取っておられていて、世界史的な観点からもっとガシガシツッコんでくれてたら、もっと迫力のある本になったんじゃないかと思うと、ちょっと残念な気のする本です。

 

未完の憲法/奥平康弘×木村草太

 

未完の憲法

未完の憲法

 

 

 先日佐藤優さんの対談本『小学校社会科の教科書で、政治の基礎知識をいっきに身につける』で、憲法関連の推薦図書として挙げられていたので手に取ってみました。

 佐藤さんが新進気鋭の憲法学者としてよく著書を紹介している木村さんが、よく著書を教材として読んでいたという奥平先生と対談されているのですが、そもそも憲法というものの成立ちから、日本での憲法の在り方、そして昨今取り沙汰されている安倍政権による憲法改正への取組について、憲法学者としての観点を語られています。

 そもそも憲法というのは市民革命の結果として勝ち取った自由を固定するという意味合いがあって、今後国家権力によって人権が蹂躙されないために制定するといった性格があります。

 でも日本においては明治憲法は諸外国からナメられないように、現憲法はGHQからの圧力で制定されたという事情があり、国民不在で制定されたこともあり、本来的な意味での立憲主義とは言えない状況であったことが指摘されています。

 そういう意味で、昨今の憲法改正論議も、改正そのものが目的となっており、どういう国家にしたいかというグランドデザインなしで行われようとしており本末転倒であることを厳しく非難されています。

 ましてや先に96条(改憲発議の要件)を改正してからという小手先論に訴えていることについては憲法の精神を根底から覆すものとしてありえないことだとおっしゃいます。

 平和ボケの日本人はあんまり危機感を持っていないかもしれませんが、安倍政権のような強権的な政権ができると、どうされてしまうかわからない危険性があることは確かであり、自分たちの人権をどう守るかということをちゃんと考えておかないとヒドい目に遭いかねないようです。

 

不機嫌は罪である/齋藤孝

 

不機嫌は罪である (角川新書)

不機嫌は罪である (角川新書)

 

 

 テレビでもよくお見かけする齋藤先生が“不機嫌”について語られます。

 ここのところ世間では以前にも増して“不機嫌”が蔓延しているのですが、にも関わらず世間での“不機嫌”への耐性が低下しているということで、以前ならちょっとくらい“不機嫌”である方がエラく見えていたのが、そういう態度すら許されないということで、なんとか“上機嫌”になれるようにしようというのがこの本の趣旨です。

 まあちょっとしたことで“不機嫌”にならないようにはどうするかというと、余裕を持てるようにするという当たり前と言えば当たり前なのですが、温かいモノを食べてカラダを温めておくとか、肩をグルグル回してほぐしておくとか、意外とそういうことを励行しておくことが、“上機嫌”につながるということです。

 ワタクシ自身も結構イライラしがちなところがあるので、なんとか“上機嫌”体質になりたいとすがりついた次第なのですが、少しずつこいう行動をしていくしかなさそうですね。

 

サッカー覚書/中村俊輔

 

中村俊輔 サッカー覚書

中村俊輔 サッカー覚書

 

 

 長らくサッカー日本代表のエースとして活躍した中村俊輔選手が、スポーツ誌Numberでご自身のキャリアを振り返られた連載で構成された本です。

 ヨーロッパでの経験、日本代表での経験、マリノスジュビロでの経験をそれぞれ語られるのですが、その深みが印象的です。

 スコットランドセルティック所属当時に、何度もチャンピオンズリーグで活躍された様子も振り返られているのですが、今考えてみると夢のような活躍ですよね!?

 CLでのマンU戦やミラン戦で印象的だったフリーキックのことも深く語られているのが印象的なのですが、フリーキックは、蹴るその時だけでなく、チーム内においてフリーキッカーとしての地位を確立するための闘い、特にヨーロッパのチームにおいては、蹴りたい人が多いこともあって、チームメイトをナットクさせるだけのクオリティを示す必要があるという、そこからして、フリーキックを決めるための闘いが始まっているというのが印象的です。

 そういう結果を残すための原点として、マリノスで高校卒業後すぐにフリーキッカーとなるべく指名された当時、チーム内でGKが当時不動の日本代表川口能活、壁に立つのが日本代表の重鎮である井原らだということで、壁にあてずにゴールを決める必要がある言うことで、練習からして本番以上の緊張を強いられたことが、FKの盟主中村俊輔を育んだというのが面白く感じます。

 まだまだトップレベルで活躍する中村選手、カズ並みの選手生命を保ってもらいたいものです。

 

1冊のノートが「あなたの言葉」を育てる/川上徹也

 

1冊のノートが「あなたの言葉」を育てる

1冊のノートが「あなたの言葉」を育てる

 

 

 「ストーリーブランディング」の川上さんが自分自身のブレイクの過程とシゴトのやり方の秘訣を明かした本です。

 会社勤めを辞められてストーリーブランディングの伝道者としてブレイクされるようになった過程を明かされているのですが、川上さん自身は「1冊のノート」ではなく、3冊のノートを駆使されたということです。

 まずは自分のコアとなる価値を見出すための「内幹ノート」、日々の気付きを書き留めておくための「日気ノート」、アウトプットのネタを仕込むための「出言ノート」という三本立ての仕込みを経て「川上徹也」になられたようです。

 シゴトをする上でのアイデア出しについての本って結構ありますし、このブログでもそういう趣旨の本を多く紹介していますが、自分の強みを認識した上で、そういうところと結びつけて戦略的にアイデア出しを考えているところが斬新で大きなウリになっていると思われます。

 ということで、我々のようなフツーの会社勤めの人でも参考になるんじゃないでしょうか!?

 

高学歴モンスター/片田珠美

 

高学歴モンスター: 一流大学卒の迷惑な人たち (小学館新書)

高学歴モンスター: 一流大学卒の迷惑な人たち (小学館新書)

 

 

 先日“忖度”を精神医学の観点から語られた『忖度社会ニッポン』が面白かった片田さんの著書に“高学歴”の人が暴走する現象を精神医学の観点から語られた本を見つけたので手に取ってみました。

 2017年に日本を席巻した「ちーがーうーだろおー!?」の豊田真由子元議員の問題がありましたが、ああいう高学歴できらびやかな経歴を持つ方々が、なぜああいう風に暴走してしまうのかということを分析されています。

 ああいう人たちは自分は“エラい”のだから他の人よりも優遇されて当たり前という、傍からみれば根拠の薄い「特権意識」を持っていることが多く、それが満たされないと激昂してしまうことがあるということなのですが、そういう人たちは著しく自己愛が強いことが多いということです。

 豊田元議員も事件が発覚した後、他人に原因を求めて、あたかも自分が被害者であるかのような釈明をしていたことでわかるように、周囲が何を言っても聞く耳は持たないということのようです。

 不幸にしてこういう人が周囲に、特に上司になった場合には来るべき反撃の機会のために、豊田元議員の秘書が会話を録音したように証拠を日々蓄積しておくしかないようです。

 そういう人たちは「無自覚」なので、こういう本を読むことはあり得ないと、この本の中でもおっしゃっているのですが、高学歴という自覚のある方がこの記事を見られていれば、他山の石としてこの本を手に取る意義があるのかも知れません。

 

小学校社会科の教科書で、政治の基礎知識をいっきに身につける/佐藤優、井戸まさえ

 

 

 佐藤優さんと井戸まさえさんの対談本がもう1冊あったので手に取ってみました。

 タイトル通り小学校6年生の社会の教科書の公民を取り上げている下巻に沿って政治制度のレクチャーをされます。

 意外とオトナでも日本の政治制度をちゃんと把握していない人が多いようで、ニュースで聞くビミョーに裏側的なトピックの本来の姿がわからないが故に歪んだ理解をしてしまうリスクがあって、ちゃんと基本に立ち返ることがニュースを理解する上で重要なようです。

 中学校や高校の教科書だと言い回しが難しいだけで、小学校6年生の教科書でも主要なトピックは概ね網羅されていて、かつ平易な表現であることから、振り返りには最適なようです。

 ということで“表”の制度面を理解した上で“裏”である実態面を把握することで、政治のメカニズムを理解することだということですが、憲法9条の解釈の問題、1票の格差の問題、世襲議員の問題などの日本の政治上のトピックを、制度面の解説をした上で紹介されているので、よく理解できます。

 憲法改正論議も出てきていることから、こういうところを振り返っておくことも必要なのかも知れません。