患者よ、がんと闘うな/近藤誠

 

患者よ、がんと闘うな (文春文庫)

患者よ、がんと闘うな (文春文庫)

 

 

 約20年前に抗がん剤投与やガンの切除と言ったガンの治療が無効だというだけでなく、却って悪化させる恐れがあるという考えを表明して、大きな話題となった近藤先生の初期の本です。

 ガンの治療においては、抗ガン剤の副作用についてよく取り沙汰されますが、実は抗ガン剤がガンを縮小させる効果については、白血病など一部のガンを除いては効果が少ないことは実は治療を施す医師の側でも多少は意識しているようですが、製薬会社との関係上、利幅の大きな抗ガン剤を否定することは難しいようです。

 またガンの切除については、患者の負担が大きく、転移の無いガンについては切除による効果も実は大きくないということで、手術をしたい外科医の意図が強く働いたことが多いと言います。

 実際に転移してしまったガンというのは完治はほぼ不可能だということがあって、患者自身のQoLの向上や体力の充実と言った方向性で、できるだけガンの進行を抑える保存療法を勧められています。

 確かにかなりムリに抗ガン剤投与や外科的手術が行われたことで結果として患者の寿命を大幅に縮めたケースを多く紹介されているのでセンセーショナルですが、でも結局治らないと聞かされると、何とかすがりたいと思う気持ちが出るのは否めないですが、そこに付け込まれているという側面もあるようですし…なかなか悩ましいところです。