コミュニティ・キャピタル論/西口敏宏、辻田素子

 

コミュニティー・キャピタル論 近江商人、温州企業、トヨタ 、長期繁栄の秘密 (光文社新書)
 

 

 サブタイトルにもある通り、近江商人、温州企業、トヨタサプライチェーンを例にとって、ビジネスにおけるコミュニティの効用を紹介されます。

 江戸時代から商売盛んであった現在の滋賀県をベースにした近江商人は「売り手良し、買い手良し、世間良し」の「三方良し」で知られ、現代で言う“Win-Win”を遥か昔から先取りしていたということなのですが、近江商人自体は全国に散らばっていながら、近江出身者の間の密接なつながりをベースにビジネスを発展させていったということなのです。

 それをワールドワイドに実践したのが中国の温州の地縁をベースにた温州企業で、世界中でビジネスを展開しながらも地域の縁者同士で融資やサプライチェーンの形成など有機的なつながりで地域こぞって発展してきたとのことです。

 トヨタサプライチェーンは、地縁ではないのですが、トヨタかんばん方式を支える部品メーカー等のネットワークが密接に絡み合うことで、緻密なビジネスモデルを形成してきたということです。

 これらに共通するのは、「近所づきあい」と「遠距離交際」という一見相反する要素を両立させるところにあるということで、遠く離れたところでビジネスを展開させながらも、地縁の密接なつながりを活かすというところにが大きなパワーの源になるということで、古くて新しいビジネスの在り方なのかも知れません。