吉野家の経済学/安部修仁、伊藤元重

 

吉野家の経済学 (日経ビジネス人文庫)

吉野家の経済学 (日経ビジネス人文庫)

 

 

 以前『吉野家で経済入門』を紹介してかなり面白かったので、最初に出版されたこちらの本も手に取ってみました。

 

 続編の方を紹介した時にも言及しましたが、こちらの方も経済学というよりも経営学的な要素の方が多く、さらには飲食店の店舗運営みたいなところも、そちらをビジネスにされている方には結構役に立つんじゃないかと思うレベルで紹介されています。

 

 続編の方で、狂牛病対応とデフレ時の値下げ競争対応のことを詳しく紹介されていましたが、こちらの方では会社更生法適用から立ち直った過程が大きくフィーチャーされたカタチになっています。

 

 都市伝説で、吉野家が倒産したのは原材料にワインを使ったりという原価の掛け過ぎが原因だとまことしやかに語られていますが、原価割れは事実のようですが、やはり最大の原因は絶好調で拡大基調にあった時に、ムリな店舗数の拡大を図ったことのようで、最近のいきなりステーキの急ブレーキにも見られましたが、チェーン店の急成長期の店舗拡大はホントに危険なようですが、なかなかその誘惑に打ち勝つのは難しいようです。

 

 特に吉野家の倒産時には、急拡大をしながらも提供する牛丼のクオリティにこだわり続けた挙句、食材の調達の際に異様にコストがかかるルートからのものを取り入れざるを得ず、しかも本部からの一括での食材提供にこだわって、フランチャイズ店への提供で逆ザヤを出すような形態にしてしまったからだということです。

 

 正編でも続編と同様、牛丼のクオリティへのこだわりを軸にした経営戦略が末端の店舗オペレーションにまで浸透しており、こんなのを読むと吉野家に食べに行きたくなってしまいますね…(笑)