学校では習わない江戸時代/山本博文

 

 

 このブログでは、出口治明さんの歴史に関する諸作を始めとして、ただ単に暗記するワケでは無く、立体的に実感するイメージとしての歴史を学ぶことを勧める本をいくつか紹介していますが、この本は以前そういう趣旨での『歴史の勉強法』を紹介した山本博文さんが、江戸時代における事象を、その時期の時代背景や人々の行動面などを踏まえた上で紹介された本です。

 

 この本ではいわゆる赤穂浪士の仇討ちや遠山の金さんなど、かつて時代劇で取り上げられていたようなことも紹介されていますが、昨今は大河ドラマを除けば時代劇を見ることすら稀になってしまい、積極的に歴史小説を読む人を除けば、歴史上の人物の心象風景を意識することはなくなってしまっているかもしれないのですが、人間のココロの動きというのは、歴史上の人物と現代に生きる我々とでも、そう極端に異なっているとは思えないので、歴史で学ぶ事象においても、その時点での人々の感情が、結果として生じた事象につながる判断の基となったはずで、そういうココロの動きを推察するのは、歴史から教訓を学ぶという意味でも、それなりに意義があることを指摘されています。

 

 またこの本で興味深いのは、江戸時代における司法制度や危機管理、地方自治、外交といったテーマについて分析されているところで、近代国家におけるこれらの機能との差異を分析しておられて、特に諸藩連合の最大の藩の当主たる徳川将軍家という位置づけから、次第に全国の統治という役割を意識して、その体制を整備していったことを紹介されています。

 

 まあ、ヨーロッパ諸国においても封建制度からの絶対王政ということで、国体の近代化に伴う中央集権化という流れがあったと思うのですが、徳川幕府が徐々にそういう色彩を身に付けて行ったのは興味深い所です、

 

 また、外交面における「鎖国」政策の絶対性に関する疑問など、かなり興味をそそられるトピックが満載ですので、そういう興味をお持ちの向きには、是非とも読んでもらいたいところです。

 

 何にせよ、歴史も人間の営みの積み重ねなので、そういうことをアタマの片隅に置いた上で学ぶことは、少し面白さを感じるキッカケになるはずなので、歴史がニガテな人は是非そういうストーリー性を感じてほしい所です。