教えないスキル/佐伯夕利子

 

 

 2020/21シーズン当初、久保建英選手がプレーしたことでも知られるリーガ・エスパニョールの強豪ビジャ・レアルで長らくコーチを務められ、現在はJリーグ常任理事の佐伯夕利子さんが語る”指導”論です。

 

 いつもブログを拝見している方がこの本を【必読】ということで紹介しているのを見て手に取ってみたのですが、”指導者”と言われる方だけでなく、部下のいる会社員の方や、子どもを持つ親など、誰か”指導”する対象がいる人はすべからく手に取って精読した方がいいかも知れません。

 

 ”指導”をカッコ付けで書き続けているのには意味があって、指導する側からすると”指導”することばかりにアタマが行ってしまいがちなのですが、究極の目標から言うと”指導”の対象となっている人が如何に学んで成長してくれるか、ということのはずで、そうなれば「教えな」くても学んでくれるというのもアリなはずです。

 

 ビジャ・レアルは育成の方針として「指導者は、選手の学びの機会を創出するファシリテーターに過ぎない」という指導哲学をお持ちだそうで、そのためにはできる限り選手が自身で色んな事に気づけるようにしてあげないということで、あくまでも指導者はそのサポートをすることに専念すべきだということのようです。

 

 特にサッカーは、局面局面を自身で判断して打開していくことが求められており、指導者の指示を仰ぐクセがついていることで判断が遅れてしまうと、大きな失敗につながるリスクがあります。

 

 だからこそ、そういうクセを無くしておくために、指導者自身が答えを押し付ける状況を、コーチに全員カメラとピンマイクをつけさせて選手たちへの”指導”の場面を、後でコーチ全員でレビューをするといったこともされていたようです。

 

 昨今ではサッカーのみならず、日本のビジネス界に置いても先輩のマネをしていればいいという状況ではなくなってきていて、個々人の臨機応変な判断が求められる場面がどんどんと増えて行っている中、日本の教育もこういう考え方が広まっていかないと、どんどん堕落して行ってしまうんじゃないかなぁ…と結構不安なキモチにさせられてしまいました。