競争闘争理論/河内一馬

 

 

 この本は、サッカーというゲームにどう取り組むかという、かなり根源的なところを分析した、かなり興味深い本です。

 

 著者の河内さんは神奈川県社会人 2 部リーグ所属の鎌倉インターナショナルFCで監督をされている方で、18歳で選手を引退した後、一旦サッカーからは離れますが、その後アルゼンチンで指導者としてのライセンスを取られて、指導者をされているということですが、おそらく余程コアなサッカーマニアにしか名前を知られていないと思いますが、展開する理論はかなりサッカーというゲームと日本人論を絡めた深遠なモノとなっていて、ひょっとしてかなり日本を革命的に強くしてくれるのではないか!?と期待させられてしまうような、傾聴に値するモノだと思えます。

 

 この本で展開されている「競争闘争理論」というのは、スポーツを、自分の持つ能力を十全に発揮しようとすることで勝利を得ようとする「競争」と、自分の持つ能力の発揮の最大化だけでなく相手の持つ能力の最小化を試みることで最終的に勝利を得ようとするアプローチをとる「闘争」に分類し、さらにそれを個人競技団体競技に分けた場合、それ以外の分野では目覚ましい成果を得ている日本のスポーツ界が「団体闘争」に当てはまる競技、特に直接的に相手と対峙する要素の強い競技では、それ以外の分野と比較するとかなり見劣りしていることを指摘されていて、そもそも「団体闘争」における勝利に向けたアプローチが間違っているのではないか、と指摘されています。

 

 よく日本人は体格が劣るから…みたいなエクスキューズがありますが、他のカテゴリーに属する競技ではある結果が残っているケースも多々見られ、それ以外のところに”原因”があるはずで、この本ではその”原因”を見事に解き明かしているように、ワタクシには思えます。

 

 というのも、日本人は目標に向かって一直線に努力して到達することは長けているので、そういう要素の強い「競争」的な競技にはかなりの適性があって結果が残るのですが、競技に作用する要素が多く、最中に局面が目まぐるしく変わる「団体闘争」の教義においては、そもそも目標設定ができなくなってしまい、「競争」的なアプローチを取ってしまいがちになり、的外れな戦略・戦術を取ってしまうことで結果を逃すことになっているんじゃないか!?と指摘されています。

 

 そんな中で、メンバーが局面局面で具体的な行動に落とし込めるような、ある程度具体性のありながらも様々な局面に対応できるようなマクロな目標設定を共有することができれば、対応できるのではないかということで、例えばサッカーだったら攻撃時には相手ゴールを、守備時にはボールを基準とするようにすることで目標の共有を図るということを提唱されていて、他の競技でもそういう目標の共有ができるのではないかという気がします。

 

 ひょっとしたらこの本が日本の団体競技の強化に目覚ましい効果を発揮して、バイブル的な本になっているかも知れませんよ!?