今日が人生最後の日だと思って生きなさい/小澤竹俊

 

 

 終末医療を専門とするホスピスを主宰されている先生が、2000人以上の患者さんを看取って来られたご経験から、終末期の患者さんの心のありようについて語られた本です。

 

 基本的にはホスピスに入られる方というのは、積極的な治療を終了されて穏やかな最期を迎えるための準備をされる方がほとんどだということなのですが、多くの患者さんが死と向かい合って、その恐怖を乗り越えて、静かな心境に到達されるということなのですが、高齢の方ならともかく、かなり若い人の看取りのご経験も紹介されていて、それでもかなり「悟り」の境地に向かわれるというのが、どういう心持なのかが理解できないでいました。

 

 ただ、追い詰められた状態になって、患者さんご自身の中でもかなりの葛藤を経た上で、これまで顕在意識の中で大事にしていたものも、次第にホントはそうではなかったことがわかり、最後にホントに自分が大切にしたいと思っていた価値観だけが残り、そういうモノと共に最期を迎えようという心境になるからこそ、穏やかな心境になるのかも知れません。

 

 フツーに健康に生きていると、タイトルで推奨されているような心境になるのはムズカシイのかも知れませんが、なにが自分の人生にとってホントに大事なことなのかを時折自分に問いかけるのは、人生を充実させるためにも大事なことなのかも知れません。