『応仁の乱』が空前のヒットを飛ばした呉座先生による、中世の市井の人々の日常の姿を紹介した本です。
この本は朝日新聞の土曜版の『Be』に掲載された連載をまとめた本なのですが、平安末期から戦国時代の文献から、歴史の教科書に載るような政治的な事件みたいなものではなく、ごくごくフツーの人々の暮らしを紹介したモノです。
まあ、文献に残るようなモノなので、ごくごくフツーとは言っても、どちらかというと庶民のモノではなく、ある程度高い階級の人々のモノとはなってしまいますが、家族のカタチであったりとか、教育、生まれてから亡くなるまでの状況、旅行や宴会などといった人々の生活の様子を紹介した、一般向けの歴史書としてはある意味画期的なモノとなっています。
あまりに淡々としているので、連載モノとして個々の記事を見ている分にはいいのかもしれませんが、こうやってまとまってしまうと、退屈してしまう部分も無きにしも非ずですが、歴史上の著名なイベントと並行してこういうフツーの人々の生活があったかと思うとちょっとココロが波経つところもあります。
また、鎌倉時代になってようやく支配階級においても現在みられるような一夫一妻制が原則的な家族のカタチとなるなど、社会歴史学的に重要なエピソードも多数含まれており、ある程度の関市を専門的に研究されている人にとっても有益な情報もあるように思えます。
どうしても歴史を語る上においては、エポックメーキング的なイベントを語ることが中心になってしまうのは、ある意味仕方がないことかもしれませんが、こういう市井の人々のフツーの日々の営みがベースになっていることを理解した上で、そういうイベントを見るのは、そういうイベントの背景を知る上で重要なヒントとなるような気がします。