武器としての決断思考/瀧本哲史

 

 

 2019年8月に47歳の若さで亡くなられた瀧本哲史さんの著書です。

 

 『僕は君たちに武器を配りたい』など、若い人たちにグローバルビジネスの場で生き抜いていくための「武器」を持てるようにする著書を多く出版されていますが、この本もそういう主旨の1冊です。

 

 瀧本さんは生前、京大で教鞭を取られていた時に、40%もの医学部の学生が瀧本さんの「起業論」の講座を受講されていたそうで、医者としてのキャリアだけでは生き残っていけないという危機感をもつ学生が多かったということです。

 

 そんな中で、”知の怪人”佐藤優さんやAPU学長の出口治明さんといった現代日本を代表する知性がリベラルアーツの重要性を再三強調しているように、瀧本さんも、今後のキャリアを作り上げていく上で、リベラルアーツの重要性を説かれているということで、その中でもディベートを特に重要だとされているということで、ディベートの啓蒙活動もされていて、この本もそんな活動の一環と言えそうです。

 

 日本ではなかなかディベートが定着しませんが、自分がどういう意見を持っているかということに関わらず、プレーンに客観的な情報を集めた上で、ある「意見」に沿った考えに基づいて発言をするということは、先入観に影響されない柔軟な対応を求められることになるようで、フレキシブルな思考のトレーニングに最適なようです。

 

 さらに、そういう思考をするために、できる限り偏りのない情報を集める方法や、一次情報へのアクセスなど、総合的に自身の方向性を決めるための「決断」のプロセスとも言えそうで、ディベートはそういうビジネス上の判断の基礎とも言える考え方になりそうです。

 

 そうなると、大多数の人々がそういう素養を備えていない日本人は、グローバルなビジネス環境で大きなハンディを背負っていることになりかねず、瀧本さんの遺志をついてディベートの普及を促すようなカリスマ的な存在が日本のビジネス界には不可欠といえそうですが…