16歳のデモクラシー/佐藤優

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんが埼玉県立川口北高校の生徒たちと、デモクラシー論の古典と言われる『光の子と闇の子』読み解く講義を行った際の内容をまとめた本です。

 

 最近、佐藤さんは高校世代に向けた教育を重視されているようで、このような高校生を対象とした講義に熱心に取り組まれていますが、そんな中でもこの本は教養を身につけるための教育というのはこういうモノなのか、と思わされる非常に高度で意義深い内容となっています。

 

 講義の中で、メインテキストである『光の子と闇の子』の通読をしながら、その原典である英語版にも当たることで英語学習に対する意識の喚起もされていますし、世界史のテキストを適宜参照しながら、『光の子と闇の子』が書かれた1944年の時代背景や独裁、貴族政、民主政の歴史的な循環のメカニズムを絡められたり、また受講生にとって大きな関心事である受験との関連までカバーされて、知識を立体的に活用できるようなカタチで伝えられているのが非常に印象的です。

 

 冒頭で佐藤さんがおっしゃられているのが、できれば高校生くらいの年代で勉強が好きになって欲しいということなのですが、どうしてもその年代だと受験向けの詰込み的な勉強を強いられがちなので、なかかなそういう状況にはならないということにも言及されています。

 

 そんな中で受験にも必要だし、将来モノを考える上で必要となる思考法の基礎ともなる、こういう立体的な教育というモノが普及すれば理想的だとは思うのですが、こんなことができるのは佐藤さん位の教養がある人じゃないとムリなんでしょうねぇ…