LINE株式会社のCEOを務められた方が退任に当たって、経営の考え方を紹介された本です。
この方、日テレ、ソニーという日本を代表する大企業を経て、現在のLINEであるハンゲーム・ジャパンに入られたということですが、転職をするたびに年収が半減しながらも、それを繰り返したのは「自由」にやりたい仕事を追い求めた結果だとおっしゃいます。
森川さんの経営に対する考え方というのは、タイトルにもあるようにできるだけシンプルに、ユーザーに価値を届けることにフォーカスすることだとおっしゃられていて、ユーザーが求めるモノをしっかりと見据えて、それを迅速に提供することが企業の成長の秘訣だとされていますが、今のほとんどの日本企業においてそれがかなり難しいことだと指摘されています。
というのも、そういうターゲットにフォーカスし続けることは難しいようで、大体の人は多かれ少なかれ、自分だけがトクをしようとか、周囲を蹴落として出世しようだとかということを考えてしまったり、そういうことに起因してか、権威に忖度したりということが発生します。
ただ森川さんによると、上昇志向も含めてそういうモノはユーザーに価値を提供するにあたっての阻害要因でしかないようで、ターゲットに向かって自由に創意工夫をできるようにすることこそが、最大の成功要因になりうるとおっしゃいます。
それだけでなく、経営管理や経営理念と言った旧来的な管理手法というのは、変化の激しい昨今の経営環境においては最早機能しえない手法だとおっしゃられていて、如何に社員が自由にその能力を発揮できる環境を提供し、阻害要因を取り除くようにすることが経営者の責務だとおっしゃいます。
どうしても自分の利益に反することもあるでしょうし、その抵抗勢力も出てくるでしょうが、成長のためにそういう本脳に根差す抵抗を抑え込んだ手腕は見事だと思えますし、今後の日本においてそういう風通しのよい会社が少しでも多くなることが、日本経済再生の起爆剤になるんじゃないかとすら思えました。