お金の減らし方/森博嗣

 

 

 森さんらしい人を食ったタイトルの本ですが、元々編集者からはおカネの増やし方みたいな主旨での執筆を求められていたそうなのですが、天邪鬼を自認する森さんはその依頼に対してこういう本で応えたということなんだそうです。

 

 でも、べつにひねくれた内容なワケではなく、言ってみれば”お金の使い方”といって差し支えない内容で、割とおカネって使い方について言及されている本が多いワケではないので、却って有意義だったかもしれません。

 

 多くの人って、ちょっと多くおカネを持つと何かを買ってみたくなるといった消費行動をとる傾向が多いのですが、そもそもそういう行動の傾向が際限のない欲望を生んで、いくら稼いでも充足感が無いということになってしまうようです。

 

 森さん自身が実践してこの本で勧められているのが、できるだけ若いうちに人生の目的みたいなものを考えて、自分がこうなったら満足するということを突き詰めて考えておいて、そういう目標に向かっておカネを稼ぐ手法を模索して、実現すれば欲しいモノが手に入っているというカタチにする方が、有効におカネを使えるということで、森さん自身、蒸気で動く機関車を家で走らせたいという欲望を抱いて、国立大学の教員というそれほど収入が多くない職業でそれを実現するためにアルバイトとして小説を書かれたところ望外の大成功を収めて、別荘地で線路を敷設して機関車を走らせるという望みを実現されたということです。

 

 そういうクセをつけておいて、大きな目標を果たして欲望を満足させると、多少おカネを持ったからと言って余計なモノを買いたいという気が余り起きないということで合理的な「お金の減らし方」と言えるかもしれません。

 

 特に周囲の目を気にして虚栄心を満たすためにおカネを使おうとするのは、全くムダで、そういうことをしているから際限なくおカネが必要になるワケで、森さんがあとがきでおっしゃっているように、人生の目標は「自己満足」であり、自分がホントに何を望んでいるのかということを問いかけることがシアワセの最短距離につながり、そういう生活をするためのヒントがこの本には満載ですので、シンプルにシアワセになりたい人は是非とも一読の程を!